ハンセン病とともに心の壁を超える

2件の記録
- 花木コヘレト@qohelet2025年10月3日読み終わった図書館本取材によって、多角的に光が当たっているなあ、と驚きました。つまり、本書の最大の価値は、序章の宿泊拒否事件と、二章のハンセン病の支援者の話と、三章の海外活動の話にあると思います。逆に言うと、一章の回復者の話は、大切だけど、新聞社以外の本でも読めます。でも、先にあげた三つは、記者が足で稼がないと、読めないと思いました。 特に、すごいと思ったのは、支援者が聞き取ったある回復者の言葉です。その回復者の方は療養所に中絶を強制されても「少しでも長く、お腹に赤ちゃんを宿せたのがうれしかった」p100、と仰ったそうです。私は読んで、絶句しました。こんな告白は聞いたことがないからです。女性というのは、また、命というのは、ものすごい力を持っていると、感じました。命の現場ともいうべきものを学ばせていただいてしまいました。 また、本書は地方誌の連載ゆえに、熊本県を中心とした記事が主役になっています。ハンセン病は多摩全生園や長島愛生園が取り上げられることが多いので、熊本の菊池恵楓園が主役の本は珍しいと思います。そういう意味で、ハンセン病の回収できていない物語を、補う価値がある本だと思います。 社会の公器としての、ジャーナリズムの精神にあふれた好著だと思います。