

花木コヘレト
@qohelet
下手の横好きで、詩が好きです。ハンセン病文学に関心があります。
- 2025年10月9日障害者差別を問いなおす荒井裕樹ジェンダー読み終わった図書館本障害者荒井さんの本は、『障害者ってだれのこと?』に続いて二冊目です。内容は同じく青い芝の会を主な題材としています。伝統的な価値観を批判せねばならなかった、脳性マヒの障がい者の苦しみが伝わってきました。国はもちろん、親もボランティアも、そして「愛と正義」も痛烈に批判せずにはいられない。読んでいてこちらも苦しかったですが、その何倍も何十倍も当事者は辛かったのだと思います。 私が本書の肝だと思ったのは以下のところです。 「奪われた肉体であるところのCP者(脳性マヒ者)は、常に奪われた言葉と意識でしか物を見ることしかできないし、行動することもできないのだ」(p108) これ、たとえば女性差別なんて、これそのものなんですよね。女性に学問はいらない、とか、結局権力者側の理屈ですよね。学問しなかったら批判の声のあげようもないですよね?だから、社会的弱者は、さらに社会的弱者になるように追い詰められていくんですよね。社会の力学がこうなっている。 だから、声をあげなくちゃいけないんですね。でも声を上げるというのは、本質的に権力を批判するということです。これが障害者には厳しいです、保護されている立場だから。だから、障害者は悪魔に映ると思います、健常者から見たら。僕はこの「悪」を社会がどう受け入れるかに社会の成熟はかかっていると思います。善悪不二みたいな思想を、私たち構成員は肉体的に受け止める必要があると思います。
- 2025年10月8日ハンセン病療養所に生きた女たち福西征子ジェンダー読み終わった図書館本ハンセン病絶望ですね、絶望。女性であることの絶望です。フェミニストの方の怒りがよく分かります。女性は流されるだけですね。社会の意識が変わらなくちゃいけないです。 ハンセン病になっただけで、戦いは苦しいものになるのに、女性は療養所内でさらにスポイルされちゃう。生きづらいですね。苦しさに無感覚になっちゃうんじゃないでしょうか? とにかく自分を無くさなきゃいけない、女性は男性に比べてさらに。これって辛いでしょうね。自分でいたいですよね、自由が欲しいですよね、人間なんだから。 あとは、人工妊娠中絶の数です。昭和27年、日本国憲法下の戦後ですよ?、に1328件(ハンセン病)が計上されています。無念ですよね。 本書の内容は、5人の女性回復者の方から、療養所生活の記憶を語ってもらうというものです。女性の体の話(生理など)とか、夫との関係の話、園内での人間関係の話、熊本判決のお金の使い道の話、などが踏み込んで話されています。 聞き取りの本なので、全体的に読みやすいですし、解説として、ハンセン病全体の概説も載っています。女性の読者の方がハンセン病を知りたいと思ったら、まずは手に取ってみるのは、良いことだと思います。
- 2025年10月7日詩と出会う 詩と生きる若松英輔読み終わった図書館本詩たくさんの詩人や思索家のエッセンスを取り出して、分かりやすく披露してくれています。ただ、若松英輔さんが言いたいことはとにかく一つのことです。つまり、眼を養いなさい、耳を養いなさい、そして心を養いなさい、ということです。 道に落ちている宝石を拾い損ねるな、苦しむ人のうめきを聞き損ねるな、星の光を浴び損ねるな。世界はこんなに豊かだぞ、見えない世界はもっと豊かだぞ、それをいつでも思い出せるようにしなさい、ということだと思います。 そういうことなら、どんな本でも言っています。たぶん若松さん自身も、特別なことを言っているつもりはないと思います。ただ、彼の場合は、圧倒的な読書量と、そして読者に差し出す詩がひと味違うのです。本書冒頭で、塔和子さんの詩を引用するなんて、若松さん一流だと思います。また、内村鑑三の詩も、神谷美恵子さんの詩も引用してみせます。若松さんは、どこにでも詩を見つけることができる人なのです。なぜかというと、彼の詩への一途な思いが圧倒的だからだと思います。 今流行りの現代詩とは違った側面で、詩の入り口に立ちたい方へ、おすすめの本です。
- 2025年10月4日ハンセン病とキリスト教荒井英子読み終わった図書館本ハンセン病この書籍が、約30年前に出版されているということは、いったい私は何を30年生きてきたのだろうか?ということを意味すると思います。 本書では国はもちろん、キリスト教も小川正子さんも光田健輔さんも、そして神谷美恵子さんも、決定的に「救う」側の立場を崩していないと、一貫して批判されています。 そして、本書を読む時に、覚悟しなければならないのは、読者の自己批判は期待されていない、ということだと私は思います。つまり、読後に己を小川正子さんや光田健輔さんらとともに断罪するのは、救らい思想を生き延びさせることになると、私は思います。 そういう意味で、本書は私たちの良心の試金石になるでしょう。この書物を読んだ後には、私たちは全力で彼らから逃げなくてはならないと思います。そこに自らを批判する猶予は残されていません。すぐさまハンセン病回復者に並ばなくてはならないと思います。 差別する、しないに、中立項はありません。グラデュエーションはありません。弱いことが弱いのではなく、弱くないことが弱いことなのだと、本書を読んで確信した次第です。
- 2025年10月3日ハンセン病とともに心の壁を超える熊本日日新聞社読み終わった図書館本取材によって、多角的に光が当たっているなあ、と驚きました。つまり、本書の最大の価値は、序章の宿泊拒否事件と、二章のハンセン病の支援者の話と、三章の海外活動の話にあると思います。逆に言うと、一章の回復者の話は、大切だけど、新聞社以外の本でも読めます。でも、先にあげた三つは、記者が足で稼がないと、読めないと思いました。 特に、すごいと思ったのは、支援者が聞き取ったある回復者の言葉です。その回復者の方は療養所に中絶を強制されても「少しでも長く、お腹に赤ちゃんを宿せたのがうれしかった」p100、と仰ったそうです。私は読んで、絶句しました。こんな告白は聞いたことがないからです。女性というのは、また、命というのは、ものすごい力を持っていると、感じました。命の現場ともいうべきものを学ばせていただいてしまいました。 また、本書は地方誌の連載ゆえに、熊本県を中心とした記事が主役になっています。ハンセン病は多摩全生園や長島愛生園が取り上げられることが多いので、熊本の菊池恵楓園が主役の本は珍しいと思います。そういう意味で、ハンセン病の回収できていない物語を、補う価値がある本だと思います。 社会の公器としての、ジャーナリズムの精神にあふれた好著だと思います。
- 2025年10月1日障害者ってだれのこと?荒井裕樹読み終わった図書館本障害者ってだれのこと?というタイトルが良いですね。障害者手帳を持っている人に限らず、健常者も含めて「声なき声」をあげている人を指しているように感じました。 健康であることや、働いていること、障害児への親の愛などの、私たちの社会で広く善と信じられている通念に、次々と疑問符を付けていく手際が鮮やかでした。それに対して、全く回答が与えられていないという、いわゆるリベラルのいつもの方法も受け入れた上で、そう思います。 働いていない障害者の友人が私にもいるのですが、正直腹が立つ。けれど彼を尊重しないといけないと、いつも思っています。横田弘さんの「祭壇」という詩は初めて読みましたが、そう意味も含めて衝撃的でした。私たちが日本国憲法を持つ限り、勤労の義務は国民を縛っているのですが、勤労を美徳とする価値観から、障害者がまず解放される未来があっても、良いのではないかとも思います。 内容は青い芝の会に重点が置かれていました。確かに、論点が青い芝の会に豊富に含まれているのは分かりましたが、もう少し別の障害者運動も広く見せて欲しかったです。 私も、差別されているという実感から、毎日の生活を築いていきたいと思います。
- 2025年9月26日アメリカ名詩選亀井俊介,川本皓嗣読み始めた図書館で借りた読書会課題本課題本で読み始めたところです。英語と日本語を行ったり来たりすると時間がかかるので、少しだけメモしておきます。 まず、ディキンソンの的確な表現にびっくりしました。great painの後にa formal feelingがcome するっていうのは、唸らされました。生きるって、そういうことですよね。 あと、メルヴィルも良いです。pilot fish がliquidly glide on his ghastly flank するっていう詩行の、単語も発音も分からないけど、かっこよさですね。男の子向けって感じです。金子光晴さんを思い出しました。 ホイットマンの無双ぶりも良い(笑) 時間が掛かりそうなので、早めに図書館で借りてよかったです。 課題本だと読書の密度が全然違いますね。
- 2025年9月21日詩とはなにか吉本隆明読み終わった図書館で借りた評論・論考三割もわからなかったけど面白かったです。 吉本さんは、うまく詩が書けると、充実感と空虚感の二つに襲われると言います。この、詩人の感覚、が私には貴重な証言でした。つまり、吉本さんは詩人として詩を書いている、という当たり前のことが腑に落ちました。 私の場合は逆で、漫然と詩を書くことしかできない。 リルケが書いていたけれど、詩を書くから詩人になるんじゃなくて、詩人が詩を書くということです。この立場ですね、自分が芸術家とは思えない、というのとは逆の立場ですね。 結局、詩から逃げてちゃ詩は書けない。自分が書くのは上手かろうが下手だろうが、詩だ、という信念ですね。これが詩を立たせるのかと思いました。だから、私みたいな下手な人ほど、この信念が必要ですね、俺が書いているのは詩だぞ、という。 これは別に人に説明する必要はなくて、自分の中でそう思っていれば良いですね。それだけのこと。実に大切なことです。
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