ベケット伝(下巻)

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- Lusna@Estrella2025年10月4日繰り返し読む一冊伝記だが、ベケット本人の言葉も多数引用されており、珠玉の言葉と出会える 「キリスト受難の日である聖金曜日に生まれ、クリスマスの翌日、一握りの親族と友人が見守る中、午前八時半にサミュエル・ベケットは埋葬された。ほかの友人たちは、葬儀の日時がわからず、あるいはクリスマスで交通の便が悪く、参列できなかったことを残念がった。たくさんの人々に愛されていたベケットである。おそらく参列希望者は数百人にものぼっただろう。数週間後、墓の上にまかれていたのは花だけではなかった。中国語や日本語など、数十カ国語の言語で書かれた短い餞の言葉の山があった。手元にあった紙切れ、学生用のノートを破ったもの、そうした感謝や賛辞の言葉の走り書きだった。地下鉄の切符にびっしり書き込まれたものもあった。まさにダブリンからやってきた物静かな男にふさわしい控えめな旅立ちだったが、世界は続々とベケットに敬意を表することになった。」