異端の被爆者

1件の記録
rina@r_1_n2025年10月16日読み終わった広島で購入。 広島に行かなければ手に取らなかったであろう本。 12歳の時に爆心地から850メートルという至近距離で被爆した兒玉光雄さん。建物内にいたおかげか、奇跡的に目立った外傷はなかったものの、放射線はしっかり兒玉さんの染色体を傷つけていた。 兒玉さんの人生は戦争によって大きく変わってしまったとも言えるし、何も変わらなかったとも言える。 被爆したことにより幾度も癌に冒され、その結果仕事を辞めざるを得なくなったりと、戦争の後遺症はしつこく兒玉さんについてまわる。でもその度に、戦争なんかに、原爆なんかに負けるものかと胸を張り、生きることへの前向きな気持ちだけは何ものにも破壊されることはなかった。 戦争の恐ろしさを伝えるだけの暗い読み物にならなかったのは兒玉さんの人柄と、その兒玉さんからの信頼を裏切らないよう膨大な資料を読み込み、取材をし、誠実にこの本を書き上げた横井さんの筆力によるものだろう。 この本を読めたことに感謝したい。



