百貨店の展覧会

百貨店の展覧会
百貨店の展覧会
志賀健二郎
筑摩書房
2018年3月15日
1件の記録
  • 東京国立博物館で開催中の「運慶」展には興福寺北円堂の弥勒如来坐像が出陳されている。初の出開帳かと思いきや、実は59年前の1966年に日本橋高島屋に出陳されている(「興福寺北円堂展」余話〈その1〉 ~60年ぶりの寺外公開となる弥勒如来像 : 初出展は、いつ何処で? 【2025.09.05】 | 観仏日々帖 https://kanagawabunkaken.blog.fc2.com/blog-entry-349.html ) このブログ記事に引用されていたのがこの「百貨店の展覧会」。戦後直後から高度成長期までの百貨店催事場そして百貨店の「美術館」での展示を取り上げている。 読むための動機が上のようなことだったので出開帳や美術展について読みたいと手に取った。しかし内容はそれ以外の催事のことが多くあった。なお取り上げられた百貨店催事は首都圏に限られる。 戦後復興期では出開帳を含む古美術展、そして産業展や子どもの作品展。その後昭和30年代では写真展、探検展など。高度成長期になり海外フェア、グラフィックデザイン展。沖縄復帰前後となれば戦後から離れた感があるのか戦争や原爆展。また文学展や昆虫展など。そして1975年には「西武美術館」が開館してイメージ戦略を生んだ。 なお百貨店で美術展や古美術展が開催された理由は、公共美術館などの不足。つまりインフラが存在しないので百貨店催事場を使わざるを得なかったと。百貨店展覧会に国立博物館が協力していることも多い。 終章では、百貨店展覧会により文化のフローばかり重んじられてストックが軽んじられ過ぎ、それが他の博物館・美術館へも影響を与えたのでは、との指摘がある。私も同感です。 他方で百貨店催事場で展覧会を開催することで、展覧会が主目的でない層にも偶然観覧する機会を与えたとも。出会いの場としての百貨店の利点。 個人的には、今はもう百貨店が目的地となることも少ないのではと感じている。大食堂も無くなった。マッシュアップ効果も激減してるだろう。百貨店が偶然の出会いを産むワクワクの場に復権することも無いだろう。 百貨店に対しての面白い視点を与えてくれた本です。一読推奨。
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