地面の底がぬけたんです: ある女性の知恵の73年史

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花木コヘレト@qohelet2025年11月8日読み終わった図書館本随筆ハンセン病ハンセン病文学では、私は明石海人が群を抜いて素晴らしいと思っているのですが、随筆分野も勝るとも劣らずで、決して侮れません。岡潔は日本は随筆(エッセイ)の国だと言っていますしね。 私が言いたいのは、つまり、ハンセン病文学では宮崎かづゑさんの存在が大きいということです。しかし、藤本としさんは、私にとってはもっとすごかったです。人間が生きるということが、毎日が真剣勝負になっています。けれども、それは実に朗らかです。藤本さんは呵呵と笑っています。つまり、藤本さんの随筆は、自他を活かす言葉の宝庫になっています。誤解を恐れずに言いますと、単なる生活に堕していない。生きていることに一生懸命ですが、決して人間の醜悪な部分は開き直っていない。気品があると言ってもいいと思います。非常に多くの事柄が学べます。つまり、人間が生きるとはどういうことかということが、豊かに示唆されています。 「ピンセット」という題のエッセイがありました。藤本さんは、心のピンセットで、毎日喜びや自然の美しさなどを、つまんでは心の中にしまうそうです。そうやって毎日過ごすんだそうです。それは先輩方から学んだものなんだそうです。そうやって、心の位置を巧みに整えている方なんです。目が見えなくても、五体満足でなくてもできる方なんです。生きるということ、生き抜くということ、でも藤本さんは肩に力は入っていないんです。怒ってはいないんです。私は藤本さんに頭が上がらないです。

