花さき山(20)

5件の記録
- 中根龍一郎@ryo_nakane2025年3月9日かつて読んだはじめは読み聞かせで出合って、やがてひとりで読むようになった。「つらいのをしんぼうして」「じぶんのことよりひとのことをおもって」こらえること、辛抱することが、花さき山に花を咲かせるという筋立ては、主人公が少女であるというのもあいまって、ケア労働を社会から周縁化された存在に担わせてきた、コンサバティブなものがもっている文化上の苦しさを、今となっては思わせる。 しかし一方で私は、子供のころから、そのように苦しみを担うということがそれなりに好きだった。耐え忍ぶことは楽しかった。 でも、困難に耐えてしまうこと、苦痛を辛抱してしまうことは、置かれているある苦しい状況を、そのままにし、のみならずその維持を助けてさえしまうことにつながっていた。花さき山はケアの担い手であることの慰めだが、慰めは体制の硬直化をうながした。花さき山にはたくさんのことを助けられた。そしてどこかで、このような花が咲いていく状況自体を変化させる必要があるのだと、理屈のうえではわかっていた。それでも花さき山を去るのは少なからずさびしかった。