怪談実話傑作選 磔

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DN/HP@DN_HP2025年11月17日さっきポストの上に放置された片方だけの手袋をみかけて、この本に収録された「軍手」という話を思い出した。 怪談本って一冊読むと続けて読みたくなりますよね。ということで、黒木あるじさんのベスト版2作目を読む。 まず最初の一編「爪先」。不発に終わりそうな取材の描写から一転、二転して最終的には怪談を聞き取っている著者自身の体験談になる。こういう“私の話”に着地するタイプが好きなんですよね。かなり小説に近い書き方な気もする。黒木さんは結構この書き方する印象もありますね。 次は「空き巣」。これはビジュアルを想像させる系かつ、家という誰もが遭遇してしまいそうな気がしてくる場所で起こる怖さがある。帰りの電車で読んでいたら帰宅が怖くなるやつだ。 3編目は「残像」。意味が分かって“解決”する話というのもある。わたしは怪談でも小説でも、わからなさをわからないまま受け止めるのが好きなのだけれど、黒木さんは“意味”や“理由”まである話も書いていく感じなんですよね。「確率」みたいに意味がわかる事自体も怖い話もあるし。この話はしっとり良さげなところに軟着陸するタイプだけど、怪異を経てホッと出来るオチに至る怪談というのもある、気がする。 次は……とずっと語っていってしまいそうな気もする、さすがのベスト版。あとは“現代”と頭にとつけたい怪談である「黒い」と「謝罪」や長尺で二転三転して“私の話”に至る「写真」に“家”で“意味”が分かる話の「侵入」も怖かった。怪談に対する、それを収集するスタンスは一貫しつつも、個人の体験談だから様々なタイプがあるし、書き方も様々にある。それに、それを読んで動く感情も様々なんですよね、とまたそんなことを思いつつ怖がり震えていました。 あ、やっぱり後一編だけ。「軍手」が良かった。これはエピソード自体も怖いのだけど、そこから“解明”される路上に落ちている軍手の真実に、ああなるほど怖い、と思った。「路上に片方だけ落ちている手袋」を研究している片手袋研究家の方のルールにも「絶対触らない」があるのは、もしかしたら観察研究だからという理由以外にここに書かれている真実も関係しているのかもしれない、と思うと真実味が加わってさらに怖がれたのでした。

