
天果
@melon-rice
2025年3月14日

図南の翼 十二国記
小野不由美
買った
かつて読んだ
ようやく自分の読んだ講談社文庫版が登録できるようになったので。
「十二国記」シリーズの中で一番自分が好きなのが、この『図南の翼』。
いろいろ好い要素があって挙げていくと長くなりそうだけど、作者はとにかくこまっしゃくれたというか、頭が良くて生意気な子供を描くのがめちゃくちゃ巧いと思った。
個人的に、子供の頭の良さというのは大人のそれとは異なる部分が大きく、また大人の賢さの劣化品でもないと思う。ただ、その違いを表現できているひとはあまり多くなくて、単に「小さい大人」になってしまっているような造形も見られるところ。
本作の主人公はその点、まさに賢い子供として描かれていて、素晴らしい。
あと、シーンごとのロジックに二段階の捻りを入れてくるのも痺れる。
たとえば、騎獣に名付けないこと。大切な騎獣なら名前を付けるだろう、というのが前提で、見捨てざるを得ない状況に備え、敢えて名前を付けないのだ、というのが一段階目の捻り。ここまでのロジックなら他作品でも見た覚えがあったけれど、本作ではもう一段階捻ってきていて、そこが感動を呼ぶ。
ほかにも、「本質を理解せずに形だけ真似るひと」みたいな人物のエピソードも、上手い具合に世界観に落とし込まれていて、読んでいて面白い。
ラストシーンの手前のやり取りも本当にグッとくるもので、いやこれネタバレしていいのかどうかわからないからとりあえず伏せるけれど、とにかく好いものだ。うん。
