
つたゐ
@tutai_k
2026年3月7日

聖地Cs
木村友祐
読み終わった
『聖地Cs』木村友祐 新潮社 #読書
原発事故で被曝した牛たちを「生かす」牧場にボランティアにいく女性の語りの表題作と、非正規雇用で働き、国粋主義に心酔し、自警団のようなものまでできてしまった日本で猫を通じて人と繋がり、貧困や資本主義について考える短編の二編を収録していた。
表題作は、実際に存在する牧場をモデルにしているお話。そこにボランティアへ行くのは、会社で「サヨク」と言われて働くことができなくなり、夫からもDVを受けている女性。原発事故で突然生活を奪われたのは人間だけでなく、畜産のために飼われていた生き物や、あるいは飼い猫や飼い犬、野良猫もそうだった。一体、命とはなんなのか、そしてそれを乱暴に決定する「政府」とは。読み応えがあった。
セットになっていた短編「猫の香箱を死守する党」、こっちもすごかった。今の日本を見ているみたい。どんな感じの「日本」が物語で描かれているか、長くなるけど引用すると
「三年前に政権に返り咲いた「日本一党」が衆参合わせて圧倒的議席数であることを盾にこれまでならタブーとされていたことを次々と改変した。武器輸出の全面的解禁そして国民投票を経ないで勝手に決めた集団的自衛権の行使容認。
さらには一月前に雇用創出の目玉として官民一体となって軍需産業を国の新たな基幹産業とするという防衛産業推進法案まで提出したものだから当然中国や韓国をはじめとする近隣諸国から猛烈な反発が起きていた。まるでビジネスのためなら殺人幇助も許されると言わんばかりの矢継早の規制解除に国内でも死んだとみなされたメディアのいくつかは控えめながらモラルの崩壊ぶりを訴えたし全国各地で内閣に退陣を求めるデモが行われていたけれどそれくらいなら政権にとっては痛くも痒くもない。というのも彼らは民意を平然と無視しても大丈夫なんだということを覚えたからだし潜在的大多数の国民はどんな法案でも企業が儲かって雇用が増えるならいいじゃないかくらいにしか思わなくてそういう人々が現政権の横暴を支えているのだ……」
こんな「日本」には、「自警団」のようなヘイトを撒き散らす集団も結成されている。いったいこの世界観に「猫の香箱」を絡めていくところがすごかった。
絶版になってるのもったいない、「今」読みたい本だよなー!と思う。2014年に出た本で、2026年の今……重なる部分もたくさんある物語なんじゃないかなと思う。
電子書籍や図書館なんかで、↑の引用とかにピンと来た人は読んでほしいな。

