
勝村巌
@katsumura
2026年3月8日
塩の道
宮本常一
読み終わった
民俗学者、宮本常一の晩年の作。「塩の道」「日本人と食べもの」「暮らしの形と美」の3本の論考を収録している。
生活学者として日本全国をくまなくフィールドワークして回った著者ならではの知見と考え方が満載で、なおかつ大変に分かりやすく読みやすい文体で書かれているのが特徴。
「塩の道」では岩塩の取れない日本における塩を仲立ちとした海の民と山の民の交流が、塩の道として各地に残っているという点に注目して展開されている。日本における塩の精製と運搬の文化が紹介されており、大変興味深かった。
「日本人と食べもの」の章では日本の農耕がどのように成立したかを読み解きながら、稲作とそれ以外の穀物(アワ、ヒエなど)、ジャガイモやサツマイモ、トウモロコシなどの伝来や国内の伝播、定着について述べている。また、日本における戦国や戦さと農民の別れ方(昔は戦さをしたのは武士だけで、農民はそこに巻き込まれなかった、だからこそ戦さ中にも食糧が供給されていた、とか)とか、稲作は朝鮮半島を経由して九州から入ってきたが、北方からソバが入ってきた流れもあり、農耕はむしろ北海道や東北の方が早く定着していたのでは、という話などは大変興味深かった。
「暮らしの形と美」は生活の中の道具のデザインについての賞で工芸教育に直接結びつく話が多いかもと感じた。民俗学の中では民具というものの研究が一つの分野な訳だが、鍬や鋸といった農具や建築道具が押すではなくなく引く形になっている理由などが時代の変遷とともに語られていて面白かった。鋸は押して削る場合は目立てをした刃は外側につくが、引いて削る場合は内側に刃がつく。ヤリガンナと台カンナの話や、畳の成立、軟質文化という考え方など、自分の生活の中に柔らかく溶け込んでいて、残り香を感じることのできる、歴史的な経緯が分かりやすくまとめられていた。
我々がどこからきて、どこへ行くのかというのは、生きる上で大切なテーゼだが、今のような社会の中では足元をしっかりみて生きるためにこういう書物の示す知見を頭に入れておくことは大切だと感じた。
講談社学術文庫で、僕が買ったのは63刷りでしてが、これからも広く長く読まれてほしい本です。オススメ!




