
Ryu
@dododokado
2026年3月8日
群像 2025年 7月号
講談社
読んでる
安藤礼二「大江健三郎論③」を読む
「想像力とは、何ものかについての意識である。何ものかへの志向性(指向性)にもとづいて、現実に存在するいまここの精神と身体とを、彼方に向けて乗り越えさせていく、投げ出させていく内発的な力なのである。この一節は、サルトルの想像力論の骨格を、大江なりにパラフレーズしたものである。そしてこの時点、つまりは『同時代ゲーム』にとりかかった時点で、大江は、未知なる未来に向けられていたサルトルの想像力論の方向を「古屋」へ、「なつかしい」過去へと向け直したのである。未来だけでなく、「古層」もまた現在の「私」にとっては未知なるをのとなる。「古層」に到達するためにも、現在の「私」、自明の「私」は、一度粉々に解体されなくてはならない。「懐かしい」という文字のなかには「壊す」という文字が隠されており、「壊す」という文字のなかには「懐かしい」という文字が隠されている。それこそが、『同時代ゲーム』に登場した「壊す人」の後に、『懐かしい年への手紙』が書かれなければならなかった理由でもある。」85

