あざらしシンイチ "経済学を手がかりに,都市と地..." 2026年3月7日

経済学を手がかりに,都市と地方を論じてみよう
Not for meの感はあったが、ところどころ面白いトピックもあり、読みやすさと比べれば満足度は高い。 以下、特に面白いと思った点について。 第1章、第3章、東京一極集中というが、九州では福岡一極集中が起きているわけで、なぜ後者を問題としないのか。特に、都市の集中度に関する研究では、都市のサイズが過大か過小かはデータの制約で判断できないものの、東京と大阪は同程度に集中しているとみなせる。なぜ東京一極集中だけが問題とされるのか、ちゃんとした検証がなされていないだろう。また、一極集中は個人個人や企業にとってメリットがあるから集中しているのであり、もっと集中した方が良い可能性だってある。こうした点は経済学のツールで議論できるわけだが、データが足りずできていないし、政策論議で十分に取り入れられていない。 第2章、人の移動と都市化について。人口移動、ひいては都市部への人口集中は、人々を成長産業へ移動させるものでもあり、有名な古典的研究では、戦前日本の農村から都市への移動に字義通りの家父長制のために抑制がかかり、もしこれがなければ一人当たりGDPが30%ほど上がっていたと言われている。人口移動を統制しようとするのはそのポジティブな側面を無視していないか。 第4章、大学進学と就職に伴う人口移動について見ている。興味深いのは東京への人口流入は実は男性よりも女性の方が大きいという事実だ。これは特に20-24歳の女性で顕著で、大都市と地方を比べたときにどれだけ大都市の賃金が高いかに関する研究では、女性の方が大都市に就職するメリットが高いとされている。 第6章、多様性と地域。人口減少は移民で補えるかもしれないと論じられることがあるが、私たちの実感の通り、外国人は人口減少が著しい地方よりも都市部に多い。例えば、全人口に占める東京都の人口シェアは10%ほどだが、全外国人人口に占める東京都の外国人シェアは20%もある。外国人は人口全体よりもさらに大都市に集中する傾向がある。また、外国人との共生に関する研究では、共生を確立するには都市部の方が容易であり、地方で共生を成功させるのはそう簡単ではないことを明らかにしている。もちろん少数の地域で共生が成功しているケースはあるが、経済活動や安易な誘致で外国人に人口減少を補ってもらおうとするのではなく、きちんと共生社会を作り上げる政策的、文化的努力をしていかなければならない。
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