庭見鶏
@niwa_midori
2026年3月11日
時の家
鳥山まこと
読み終わった
白昼夢のような文章にまどろんでいるうちに読了。概ね予想通りの流れ。何も大きなことは起きないがこれぞ人生。大なり小なり悲しいことも嬉しいこともありつつ、人はただ生きていく。一人一人に人生があり、その記憶は交わることはない。ひとつの家という空間にだけ確かに痕跡が残っている。しかしその家も最終的には壊されてしまう。青年の必死のスケッチが最後の抵抗だ。
何も残さない者が生きることとは?(大半の人間がそうだ。)生きた証を残そうとしてくれる、覚えていてくれようとする存在がいるだけでも救いなのかもしれない。おそらくこのスケッチは、青年自身が生きた証にもなるし、どちらかというとその意味合いの方が強いのだろう。自分の輪郭を形作るひとつが消えようとしているなら、必死で残そうとする。このスケッチもいずれ消えて失われていくとしても。
失われた30年を生きてきた30代の作者らしい作品なのではないだろうか。
読後感は非常に穏やか。

