
Miyuki
@miyuki_i
2026年3月14日
韓国の今を映す、12人の輝く瞬間
イ・ジンスン(이진순),
伊東順子
読み終わった
韓国のジャーナリストが新聞に連載していたインタビューを12人分選んで単行本化したもの
世界の文学フェアで版元のクオンさんがおすすめされていたのをきっかけに購入
翻訳者の訳注やコラムも加わっていて、背景がよりわかりやすい
あとがきによると、著者は偉人伝の英雄譚ではなく、「平凡で実直な人々の人生譚」につねに心惹かれていたそう。「傷つき、悔やみ、ためらい、時には臆病になりながらも、善良で美しい選択をしようと頑張ってきた方々の素直な語りが、読者の皆さんに勇気と希望を与えてくれることを願いました」とあるように、それぞれのインタビューに登場する人は、とても平等とは言えない社会で、他者のために人生を捧げてきたような高潔な人々で、でも自分はインタビューされるような人ではないと腰が低い。読んでいて背筋が伸びた
特に心に残ったのは最後のチェ・ヒョングクさんのインタビュー。2014年の当時、朴槿恵政権の韓国で著者が感じ取っている絶望が、まるでいまの日本を写しているように感じられる。「その存在だけで心を満たしてくれる大人に会うのが、こんなにも難しいとは」と著者は記しているが、訳者によるとこの「大人」というのは韓国語では「人格的に立派であること」の意味が含まれているそう。チェ・ヒョングクさんの語る言葉は大人のそれだ
ーー金儲けが信仰になり、権力と名誉が信仰になる
ーー「正しい」という発言には、必ず間違いがある
ーー財産は世の中のものですーー世の中の人々と分け合わなければいけません
ーー人というのは……もともとそういう存在なのです。卑怯なのが「通常」、普通のことなのです
ーー強制的に原則を作っておいて、原則からはずれたからと非難するのは独裁的な考え方です
ーー人々と善良な気持ちで共に何かを願い、心が互いに通じ合う時……実に甘美ですよ
ーー人々は「正しいか正しくないか」を判断するのが考えることだと思っていますーー考えるとは抵抗し拒否することです
こんな大人を私も強く求めているのだと気づかされた
韓国文学を読むと、社会に対する怒り、悲しみ、民主化を自ら勝ち取ってきた誇りと危機感を強く感じる。多くの日本文学よりも力強く感じるのは、その社会背景に起因するのだと思った
その背景が、一般の人々の言葉でまっすぐ伝わる、そんな一冊だった
