
波
@namireads
2026年3月17日

椋鳥
古井由吉
ふと思い出した
「子安」
女は同時期に関係を持った二人の男に対して妊娠したと告げる(おそらく狂言)、一貫して感情を失くしたかのように淡々と男の言動を傍観する女。くわしくは書かれないけれど、女の断片的な語りから娘時代の暗い過去が想像される。その明かされない内面、男への呪詛のようなもの。自分が凌辱した女の事などすぐに忘れ去り、子の安寧を菩薩に祈願する
"身をそそくさと洗いながし、子安の前で女の穢れを払って、我身の浄さを誇る…"
他所では平然と女を汚しながら、自分の娘には聖性を願うようなそのおめでたさ
静かにとぐろを巻く記憶と、女の生理の、流れていく血が重なる最後の場面の底知れない虚無、これを書いているのが女性ではないということが何よりおそろしく感じた作品
「椋鳥」
おびただしい椋鳥の黒い群れ、赤い空、狂気へといざなわれるような不穏な書き出し
二人の女のあわいを揺蕩う男、男の視点で語られてはいるものの、その男の現実感が希薄。もう半分くらい狂っているのかもしれない
"暗い夢を見ているうちはまだ安心、夢が明るくなってきたら、用心したほうがいい。"
太宰治の右大臣実朝を思い出す、
アカルサハ、ホロビノスガタ
緩慢に、確実に、精神が壊れていくそのさまは、どこか明るく、ぼんやりとした静寂に包まれている
どれも少しずつ狂気を孕んだ短編集、なんでこんなマイナーなところから手を出したのか謎だけど
古井由吉さん、気になりながらもこれ以降読んでないのですよね、今年中に杳子を読むのが目標