
海底
@kaitei
2026年3月17日
ウエハースの椅子
江國香織
読み終わった
凄まじかった。
読めるタイプの麻薬。文章のアート。
終始甘やかで静かに踊るような、歌うような描写で、一切のストレスなく物語に運ばれる。途中でやめられない。
ただしストーリー性はない。ほぼない。
眩しいくらいに鮮明な、生活の中での料理や音楽、満ち足りた会話の数々。好んで使っている香水。旅先の星空のこと。
なのに読んでいてどんどん酸欠になる。
「ここは視界がひらけすぎている。果てがない。私たちは自由で、そして閉じ込められている。」
タイトルが本当に素晴らしい。
ウエハースの椅子。薄い生地に挟まれたクリームのお菓子で出来た椅子。幸福の象徴。それは美味しく甘美で、だけど絶対に腰を下ろせない。
悪い夢のようで、それは絶望に似ている。








