うーえの🐧 "罪の水際" 2026年3月22日

罪の水際
罪の水際
ウィリアム・ショー,
玉木亨
⭐️⭐️⭐️⭐️ 正義に憑かれた女刑事と、英国の果てに潜む「罪」の連鎖――。 イングランド南東部、ケント州ダンジェネス。原子力発電所がそびえ、「イングランドの砂漠」と呼ばれる荒涼とした海辺の小さな町が、本作の舞台です。 主人公のアレックスは、過去の事件でPTSDを患い休職中の女性刑事。本来は捜査に関われない身でありながら、同性婚パーティでの凶行未遂を防いだことを皮切りに、町で起きた老夫婦惨殺事件の謎に引き寄せられていきます。周囲の制止を振り切り、刑事の業に突き動かされるように単独捜査を進める彼女。点と点だった事件は、やがて町全体を呑み込む投資詐欺事件と、濃密な人間模様へと繋がっていきます。 本作の最大の魅力は、かつて友人の警官すら逮捕したほど「四角四面で真面目」だったアレックスが、法の限界と理不尽な悪を前に、ある究極の決断を下すラストです。彼女をそこまで追い詰めた本当の正義とは何だったのか? さらに本作は、本国イギリスで展開される長編シリーズの1作(第5作目)でもあります。そのため、同僚たちとの絶妙な距離感や、娘との不器用な関係性など、語られざる「過去の蓄積」が随所に匂い立ちます。未邦訳のエピソードに思いを馳せながら、キャラクターたちの行間を想像で補い読み解くのも、本作ならではの贅沢な味わい方です。 CWA(英国推理作家協会)賞最終候補にも選ばれた、現代英国ミステリーの到達点。閉塞感漂うコミュニティのリアルと、傷ついた主人公の人間味あふれる葛藤に、あなたも必ず引き込まれるはずです。
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