
何かの化石
@kaseki_san
2026年3月23日

人類最初の殺人
上田未来
読み終わった
大いに不満である。
基本的にこの作品では、ラジオ番組の中で国立歴史博物館の犯罪史研究者が人類の犯罪史を振り返り、紹介するという形式をとっている。
話の内容自体は面白い。
しかしである。
博物館の、しかも研究者が、なぜに史料を元にせず話すのか。
最初の短編である「人類最初の殺人」を例にすると、死因が撲殺と判明したところまでは良い。そこは本文中で化石が提示されている。
問題は撲殺に至るまでのその過程である。何通りも考えられるのに、何故一意に決まっているのか?化石の状況からは、びっくりして殺しちゃった、というオチも十分考えられるはずである(シンプルであり得そうである)。それにもかかわらず、あの様な過程経ていると言うのであれば、根拠が必要だ。だが、そこには一切触れられていないうえに、お前は現場をその目で見てきたのか?と突っ込みたくなる様な話ぶりである。史料や証拠に基づかなければ、それはただの妄想でしかない。
これは構成に問題がある。別に話者が研究者である必要はないのだ。各時代の各登場人物視点の物語であれば、すんなりと受け止められたであろう。
小説なんだからなんでもありと言えばそうなのだが、博物館所属の研究者を話し手にするからには、どうしてそう言えるのかという論拠の提示は、最低限のリアリティーラインではなかろうか。
研究者が語る内容が面白いだけに、とても残念である。

