しろくま
@shirokuma1909
2026年3月24日
みな、やっとの思いで坂をのぼる
永野三智
読み終わった
借りてきた
水俣病に関する各種手帳の申請受付終了後の2012年から7年のあいだに、水俣病センター相思社で働く著者が相談業務のなかで聞いてきた、水俣病患者とその家族の語りを中心に集めた本。
冒頭に水俣出身である著者の幼年期の「苦い思い出」が記されており、その辺りからずっと泣きながら読んだ。こんなに泣いたのはひさしぶりに思えるほど泣いた。
本文中で書かれている患者さんとその家族の語りは、水俣病がタブー視されている水俣のなかで「やっとの思いで坂をのぼ」り相思社に辿りついたひとたちの語りであり、どれも胸を打つ。
幼年期からしびれや頭痛、こむらがえりなど水俣病の症状に苦しんできて老いるにしたがって、症状が重くなっていくこと、水俣病の認定申請をしてもなかなか受け入れられないこと、医者が意見書を書くのをいやがること、不知火海沿岸周辺以外の病院などでは(病院側の知識不足のために)「水俣病被害者手帳が使えない」と言われること、行政が定めた厳しい基準と一部患者のみを対象とした救済措置のために、さまざまな分断が生まれていること、家族間で水俣病のことを話し合うことができないこと、かつて水俣病患者を差別し、無視してきた側のひとも患者となること、著者が患者さんの話を聞いてもその痛みを前に何もできずにいて、それを不甲斐ないと思っていること、その苦しみが文章から強く感じられる。