しろくま
@shirokuma1909
- 2026年3月24日
みな、やっとの思いで坂をのぼる永野三智借りてきた読み終わった水俣病に関する各種手帳の申請受付終了後の2012年から7年のあいだに、水俣病センター相思社で働く著者が相談業務のなかで聞いてきた、水俣病患者とその家族の語りを中心に集めた本。 冒頭に水俣出身である著者の幼年期の「苦い思い出」が記されており、その辺りからずっと泣きながら読んだ。こんなに泣いたのはひさしぶりに思えるほど泣いた。 本文中で書かれている患者さんとその家族の語りは、水俣病がタブー視されている水俣のなかで「やっとの思いで坂をのぼ」り相思社に辿りついたひとたちの語りであり、どれも胸を打つ。 幼年期からしびれや頭痛、こむらがえりなど水俣病の症状に苦しんできて老いるにしたがって、症状が重くなっていくこと、水俣病の認定申請をしてもなかなか受け入れられないこと、医者が意見書を書くのをいやがること、不知火海沿岸周辺以外の病院などでは(病院側の知識不足のために)「水俣病被害者手帳が使えない」と言われること、行政が定めた厳しい基準と一部患者のみを対象とした救済措置のために、さまざまな分断が生まれていること、家族間で水俣病のことを話し合うことができないこと、かつて水俣病患者を差別し、無視してきた側のひとも患者となること、著者が患者さんの話を聞いてもその痛みを前に何もできずにいて、それを不甲斐ないと思っていること、その苦しみが文章から強く感じられる。 - 2026年3月22日
- 2026年3月22日
- 2026年3月19日
現象学的質的研究入門村上靖彦借りてきた読み終わった - 2026年3月13日
ショッピン・イン・アオモリ能町みね子借りてきた読み終わった東京と青森の二拠点生活を営む著者による、青森に関するエッセイ本。著者は「定期的に青森に、間違いなく買いものをしに来ている」(14頁)と述べる。この本は、著者が青森で買ったもの+それに関するエッセイのかたちで基本的には構成されている。友人が青森に移住することになったため、青森について知るために私は読んだ。 印象深かったのは、①ホタテなどの水産物がとても安い価格で、おいしそうであること、②青森県と総称しても、青森市、弘前市、八戸市などの地域差があること、③自転車+公共交通機関を用いた移動であっても(自動車を使わなくても)、青森県での買いものをかなり楽しめること、の3点。 あとがきには「みなさまも、場所じゃなくても、状況でも、依存する人でもなんでもいいから、逃げ場を持ちましょうね。逃げ場があるって、いいことよ」(217頁)というすばらしいメッセージがあり、巻末には書籍内に登場した企業による広告(?)まである。青森に行ってみたくなるようなすばらしい一冊。 - 2026年3月13日
陰謀論秦正樹借りてきた読み終わった①私自身が陰謀論的思考にかなり親和的で(陰謀論がかなり好きで)、②居住地の選挙で陰謀論的主張がくり返され、③陰謀論と政治の関係について最近友人と会話する機会があった、などの理由で手に取った。 本書では、「誰が、なぜ陰謀論を信じるのか」という問いに対して、データ分析を用いて答えている。調査時点での日本社会の傾向を知るうえで、かなり勉強になる。分析結果から「ネット右翼やオンライン排外主義者に近い意見を持つ「普通」意識を持つ人、リベラル左派が多くを占める野党支持者、あるいは、政治に関心が高かったり知識が高かったりする人も、みな、「自分の信念に沿う」陰謀論を信じる傾向にある」(217頁)という敷衍がなされ、「陰謀論が、自分の信念や認識の正しさを肯定してくれる「良き友人」となりうる点にこそ、大きな問題が潜んでいると言えるだろう」(218頁)と筆者は述べている。妥当な主張なのだろう。 2026年現在の政治状況に対する筆者の認識も伺ってみたい。 - 2026年3月12日
- 2026年3月11日
- 2026年3月11日
- 2026年3月9日
沖縄県史 ビジュアル版14 沖縄戦沖縄県教育庁文化財課資料編集班借りてきた読み終わった「これまでの沖縄戦研究をふまえ、住民の証言や史資料に基づきながら、写真や図を多く用い、よりわかりやすく沖縄戦の実相と継承の取り組みについて理解」(もくじ頁)できるように構成された本。2ページ見開きで1テーマ、解説文とそれの抄訳のついた構成。 沖縄戦に至る前から戦後のはじまりまで概観できる。「第3章 沖縄戦の諸相」には知らないことがたくさん分かりやすく提示されていた。 沖縄戦研究の蓄積を感じるすばらしい本。 - 2026年3月7日
岐路に立つドイツの「過去の克服」マイケル・ロスバーグ,サラー・エル・ブルベイシ,ジェイソン・オーバーマン,A・ダーク・モーゼス,三牧聖子,板橋拓己,武藤一羊,浅田進史,香月恵里借りてきた読み終わった2023年10月以降の「イスラエル・パレスチナ紛争」を踏まえて、ドイツの「過去の克服」を問うことを目的とした論集。 以下、印象に残った点を箇条書き。 第一章 ・ベルンハルト・シュリンク『朗読者』の執筆や、W・G・ゼーバルト「空襲と文学」講義などがなされた時代状況の整理。 第二章 ・湾岸戦争が現在のドイツとイスラエルの関係に及ぼした影響。 ・メルケルがイスラエルへのドイツの責任を「Staatsräson(国家理性・国是)」と結び付けた過程。 第三章 ・「歴史家論争1.0」と「歴史家論争2.0」の比較と整理。 ・(「歴史家論争1.0」と「歴史家論争2.0」では)右派はホロコーストの比較を奨励する立場から比較の正統性を否定する立場に転じたと考えられるものの、ドイツの責任を最小化しようとする点では一貫していること。 第五章 ・ポストコロニアリズムと反ユダヤ主義を結びつける論調が2020年代のドイツでは盛んなこと。 ・ポストコロニアリズムを批判する側の論理 批判者は、ポストコロニアル研究の以下の➀〜③を批判。 ➀ホロコーストと他のジェノサイドとの差異をなくし、それらを均一化している点 ➁反ユダヤ主義を他の人種主義の派生物とみなし、反ユダヤ主義の特殊性を無視することで、ホロコーストとその他の大規模犯罪との差異を無くしている点 ③イスラエルを批判する際に、イスラエルを「悪魔化」し、「イスラム主義者」の反ユダヤ主義やイスラエル敵視についてはテーマ化しない「二重基準」を適用し、イスラエルのパレスチナ占領を「脱正統化」している点 - 2026年3月1日
沖繩ノート大江健三郎借りてきた読み終わった高名な作家による「沖縄を核として、日本人としての自己検証をめざすノート」(204頁)。書かれた時期が1969年1月から70年4月まで。いわゆる日本復帰前の沖縄を「本土」の知識人が繰り返し訪れ、思考したことを綴ったノートだと言えるだろう。 大江健三郎独特の、主述関係の把握が困難に思えるほど長い一文の頻出もさることながら、「本土」の「日本人」であることの罪責感が全編に満ちている。「本土」の「日本人」が沖縄について考える際の、足場を形成する(あるいは、修正する)本と言うべきなのだろう。このノートは以下のように終えられている。 「日本人とはなにか、このような日本人ではないところの日本人へと自分をかえることはできないか、という暗い内省の渦巻きは、新しくまた僕をより深い奥底へとまきこみはじめる。そのような日々を生きつつ、しかも憲法第二二条にいうところの国籍離脱の自由を僕が知りながらも、なおかつ日本人たりつづける以上、どのようにして自分の内部の沖縄ノートに、完結の手だてがあろう?」(228頁) - 2026年2月27日
「なむ」の来歴斎藤真理子借りてきた読み終わった1992-1996年まで那覇市の首里城のそばに住んでいたときに書いたものや、2017年から2025年現在までの韓国文学の翻訳を開始してから書いたものを集めた「寄せ植えみたいな本」。すべてを読んでみると、斎藤さんの人となりが伝わってくるのだが、気の向いたときに気になったものを読むとよい気がする。 - 2026年2月25日
いま沖縄をどう語るか佐古忠彦,新崎盛吾,松元剛,謝花直美,鎌倉英也借りてきた読み終わった - 2026年2月23日
借りてきた読み終わった2025年に出版された沖縄戦史。巻末の参考文献に示されるように、膨大な資料と、『沖縄県史 各論編6 沖縄戦』(2017年)、『沖縄戦を知る事典』(2019年)、『続・沖縄戦を知る事典』(2024年)などの最新の研究を踏まえて執筆されている。歴史的な事実の叙述が詳しいのみならず、「普通の人々の視点から沖縄戦の実相に迫るために多くの体験者の証言を引用紹介した」(19-20頁)ものとなっている。いくつか特徴を挙げてみよう。 ①丁寧な叙述 「表1-1 第32軍編成表」(41頁)の細かい数字の推計や、「図3-3 宜野湾 字ごとの戦没者率」(107頁)の引用・紹介など、かなり細かい数字まで丁寧に拾って記述している、という印象を受ける。沖縄戦における戦没者数という重要かつ基礎的な事実も明確ではない点に言及していて、勉強になった(292頁から)。本文中に挿入されている図表も、読むうえでかなり役に立つ。 ②沖縄の人々の視点 史実の記述が丁寧なのも然ることながら、とりわけ第四章において多くの人びとの証言を引用している点にも特徴がある。また、「沖縄で起きた戦争」の話だけではなく、「沖縄の人々が経験した戦争」を描くという視点から、第四章の「10 沖縄の外での戦争に参加した沖縄の人々」「11 移民した人たちの戦争」についても記述している点が特徴的だった。 ③沖縄戦の原因を考える視点 第五章に「2 どうすれば犠牲をなくせたのか、減らせたのか」という項目があるように、どうすれば犠牲をなくせたのか、減らせたのか、という問題意識がかなり明確。随所にその問題意識に基づいた提言がなされていて、現在から沖縄戦を再検証するうえで考えさせられることが多かった。 本書は以上のような特徴を有している。新書判でありながらも、1ページあたりの文字数は多く(42文字×16行)、合計で348頁ある。じっくり読むのに相応しい一冊だと思う。 - 2026年2月21日
- 2026年2月18日
借りてきた読み終わった慶良間諸島の戦争体験者37人に「集団自決」の体験、戦後そのこととどう向き合ってきたのかを聞き書きした本。沖縄タイムスで2007年5月から12月まで連載された「命語い」(ぬちがたい)をもとに、大幅に再構成されている。 「第一章 慶良間戦とは何かーー沖縄戦最初の地上戦」は、沖縄戦における慶良間戦の位置づけを簡潔かつ的確に伝えており、その後に続く聞き書きの導入として優れていると思う。 第二章以降の聞き書きに関しては、あまりに過酷な内容のものが多く、陰鬱とした気分となり、目を閉じたくなるようなことが多かった。しかし、読んでいく過程で、「慶良間諸島における集団自決」のなかにも、渡嘉敷島、座間味島、慶留間島、阿嘉島では違いがあり、生き残った人たちの経験や戦後に抱いた感情もさまざまなのだということに思い至った。付け加えるなら、37人の証言を謝花さんが再構成して提示されているので、(もちろん人によるだろうが)もとの証言がどのような語りで、どれくらいの長さのものだったのかは気になるところ。 ①歴史修正主義者たちによる、歴史教科書や出版物の「集団自決」の記述から軍強制を削除させるという「沖縄プロジェクト」、②大江健三郎『沖縄ノート』の軍命の記述が名誉毀損にあたるのかを争う裁判などの歴史修正主義の動きが加速するなかで、2007年3月の教科書検定では教科書の「集団自決」の記述から軍強制が削除されることとなる。これらの流れに抗うようにして語られた証言の数々を(それが実際にどの程度実現できているかは心許ないとはいえ)受け止めたいと私は思っているし、受け止めることができる社会であってほしいと思っている。 - 2026年2月18日
母の遺したもの新版宮城晴美借りてきた読み終わった沖縄戦研究と座間味島に生まれた宮城初枝さんの遺した手記をもとに、娘である宮城晴美さんが記した座間味島の「集団自決」に関する本。 第一部では宮城初枝さんの手記を載せ、第二部では座間味島の「集団自決」を住民の証言をもとに記述し、第三部では座間味島が海上特攻艇の秘密基地となってやがて「集団自決」に至る過程を中心に記述し、第四部では宮城初枝さんによる梅澤元隊長に関する証言とそれが及ぼした社会的影響を中心に記述している。最後には、「なぜ《新版》を出したのか」についての理由を①梅澤元隊長らが提訴した裁判、②「援護法」との関係から説明している。 全編読んでみると、宮城初枝さんの証言がはからずも及ぼしてしまった負の大きな影響が相当に初枝さんを苦しめたことが伝わってくる。と同時に、初枝さんの証言を適切なかたちで座間味島の「集団自決」の集合的な記憶に位置づけようとする著者の努力も伝わってくる。 もう一点印象に残ったのは、「集団自決」に関与した男たちの姿だった。妻と子どもたちの首を次々に剃刀で切りつけ、最後に自分自身を切りつけた晴美さんの祖父の姿。山羊を殺す様子を偶然見た晴美さんに「この人は首切り専門だから」と妻(晴美さんの祖母)から言い放たれる祖父の姿。ネコイラズを用いても死にきれずにいる家族八人をすべて殺し、自分も死のうとしたものの生き残ってしまった男の姿。戦後に座間味島を訪れることになるものの、住民の死には大して興味を示さず部下の戦死にばかり哀悼の意を示した梅澤元隊長。これらの男たちの姿はジェンダーの観点からも検討されるべきだろう。 - 2026年2月17日
- 2026年2月12日
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