阿雁燈 "消費税と政治" 2026年3月24日

阿雁燈
阿雁燈
@sk88p
2026年3月24日
消費税と政治
消費税と政治
上川龍之進
2026年最初の課題図書。 財政再建は重要な政治的争点であり、その方途の一つは税収増である。本書は、高度経済成長以後の日本政治において、なぜ不人気政策である消費税導入に成功し、消費税増税が可能となったのかという問いについて、豊富な文献資料から実証的に解明することを試みる。 問いに対する本書の結論は、343ページに要領よくまとめられているので引用する。 このように日本で財政再建政策がとられる場合、政治的影響力の増大・維持を図る政治家が、政治的な思惑から財政再建や消費税増税を唱えることが多く、財政再建の客観的必要性や、(一部の政治家を除いて)財政再建への強い理念によるものではなかった。こうした政治的思惑こそが、公共選択論の予測を裏切り、短期的には財政破綻の見込みが小さい日本で、財政再建が政治課題となることを可能にしてきたのである。(上川、2025: 343) その上で本書は、今後、ポピュリスティックな財政再建策が挫折し、世論が財政再建の必要性を強く認識したとき、消費税増税が進むであろうと予測をする。この予測は、大蔵省・財務省が採り続けてきたシナリオに近く、あまり新規性はないように思えるが、だからこそ現実味がある。財政ポピュリズムが広がる今こそ、読まれるべき好著である。 余話だが、いちいち通好みなエピソードをぶち込んでくるのが著者の上川氏らしさを感じた。とりあえず個人的に最高な2箇所を引用する。 まずは税調のドン、山中貞則に関するもの。 山中は、政府税調の最終答申を受けて十月三十日から始められた自民党税調の総会で、「政府税調を軽視するつもりは決してない。無視するだけだ」と発言する。これに中曾根がクレームをつけようとすると、「首相には口をはさむ能力はない。まだ懲りないのか、このおしゃべり野郎」と言い放ち、最終結論を出すのは党税調であると強調した。(上川、2025: 103-104) 次に安倍晋三と財務省のバトルについて。 安倍は、「たかが一官僚のくせにあり得ないだろ。それとも、香川は、オレに政局を仕掛けているのか」と述べるなど、政界、経済界、メディア、有識者から創価学会にまで根回しを行った財務省への不信感をますます強めた。(上川、2025: 314)
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