
いーじーらいす
@EasyRICE
2026年3月26日
ショパンゾンビ・コンテスタント
町屋良平
読み終わった
「ピアノを弾くなら、おおいなる何百年を遡って生きる、当世の音楽家の生を生きる、そんな不可能性のアクロバティックを、楽曲分析と演奏という運動との関係のなかでのみ果す。楽譜という死者の書をよみ楽器を用いて再現する運動のさいちゅうにおいてのみ〝いま/現在"まさに、
ショパンを生きる冒険を。
遂げるためのながい道のりをあゆむ、コンテスタントのそれぞれの生。生のかがやき。その影を追って、ピアノは会場に鳴りひびく。
いまを生きる困難を。
明日を生きる容易さを。
過去を生きる安心を。
何度も何度も確認して、はじめて〝いま/現在"がだれかとのあいだに共有されるのであって、こんなことは通常、だれにも理解はされない。説明では至らない表現のきびしさ、孤絶だけがそこにある。だけど、だれにもわかられないままで演奏なり小説なりを、完成させておかなければ、聴衆も読者もうまれえない。演奏家の認識からわずかおくれてピアノが鳴り、更におくれて聴衆は音をきき、更に時がながれて音楽になる。ごくまっとうに生きてひとは未来のほうを向きながら、遅れた現実を生きつづけるしかないわけで、それはまるで過去を生きているみたいで、しんに〝いま/現在”を生きるなら学問か芸術しかない。
星座が結ばれたときにはもう、運動はおわっている。」
