
deepend
@deepend
2026年3月26日

君はフィクション (集英社文庫)
中島らも
読み終わった
かつて読んだ
表題作をはじめ、軽やかで読みやすい短編が続いていたので油断していたら、「45号線の亡霊」の文章で息をのんだ。
”自転車は、やってきていた。光輝いて。光の剣の束のように輝いて。真紅に、オレンジに、空の蒼の色に、金に、白金に、コバルトブルーに、花弁のもつ色の全ての清澄さに輝いて、それは、いわば光がその光自体の速度をわざとゆるめて、この世でほんの道くさに演じて見せる花火のショーのような、美しさと無意味さで、そいつは輝いていた。”(p.151)
ずっと会いたかった競輪選手の亡霊に邂逅した時の溢れんばかりの多幸感の描写。痺れる。
亡霊に遭って魅せられました、というありふれた且つ現実味のない物語に美しい説得感が出ている。この筆致で書かれたらもう惚れてしまう。
一番好きなのは「ポケットの中のコイン」。どこか緊張感のある文章で構成された4ページ足らずの小説。
世界が醜く汚いのは自分のせいであると自覚してしまった少年のこと、それでも生きていくかどうかをコインに決めてもらったこと。
なんでこの本10年以上積んでたんだろ。
