
bitter
@blendme
2024年12月24日

こわれた腕環
アーシュラ・K.ル=グウィン,
清水真砂子
かつて読んだ
テナーとの出会い!
彼女が今知り始めていたのは、自由の重さだった。自由は、それに担おうとする者にとって、実に重い荷物である。勝手のわからない大きな荷物である。それは、決して気楽なものではない。自由は与えられるのではなくて、選択すべきものであり、しかもその選択は、かならずしも容易なものではないのだ。坂道をのぼった先に光があることはわかっていても、重い荷を負った旅人は、ついにその坂道をのぼりきれずに終わるかもしれない。p.241
〈訳者あとがき〉
たとえ滅びても闇に身をゆだねたいと思うのも人間の本性ならば、生への願望につき動かされて、困難とわかりつつ、光への道を歩もうとするのも、これまた人間の本性といえましょう。p.255
自分の生きてきたことの意味を考え、未知なる世界への不安におびえ、自由の重さに逡巡(しゅんじゅん)するテナー、ゲドに向かってひそかにナイフを握りしめたテナーには思わずどきりとさせられます。余りにも私たちの真実をついているがゆえに。
私たちの人生は何とその誘惑に満ち、そして、それに抗うことの何とたいへんなことか。けれど、だからこそ、この『こわれた腕環』は、人間らしく生きるということの何たるかを読む者に考えさせる力を持つのでしょう。p.256
2023/01/31
