
巽
@Tatumi
2025年3月16日

黒耀宮
黒瀬珂瀾
再読
吾はかつて少年にしてほの熱きアムネジア、また死ぬまで男
曼珠沙華を蹴るごと歩む 我が恋を蔑む者のありて初霜
天井ゆ紅き椿が降り来ると君が言ふならうなづいてやる
書架見ればおのづとわかる書世論 体は高く売るべきである
月無くて白河夜船 黒猫が人身で恋を告げにくるとか
男にも身をひさぐ術あることが涼しくていま黄金休暇
パーティの前にトイレでキスをして後は視線をはづす約束
ネオン街より始発にて去る我を溶けゆく月よ見下してくれ
桜散る下にて奴に犯さるる夢見きいまだ桜は咲かず
今日もまた渚カヲルが凍蝶の愛を語りに来る春である
死刑廃止論さながら春の夜の蛤の鍋ふきこぼれたり
過ちですまぬ暗転、劇場のごとき閨より帰れぬ二人
林檎酒の滓ほどの闇 密会は月の海より風吹きてこそ
いづれ病む精神を抱き歩みたり雨後に避けたる無花果の下
薔薇の芽を摘むほどの悪事しか知らぬ君を利口にしてあげようか
儚しといふはけなげに囁くといふことである 君に降る雪
わがために塔を、天を突く塔を、白き光の降る廃園を
まじで好き

