
るり
@utatanest
2026年4月1日
読み終わった
文体の話かもしれないけど、読んでいて無駄にカタルシスを覚えるような感じの文章ではなくて個人的に好きだった。フォーカスを当てる出来事を選ぶのが上手いのかな。
経験の度合いや環境は違うとはいえ、なんか身に覚えのある話がたくさんあった。学べば学ぶほどわからないことが増え、指導教員から与えられたものだけではなく、自分で本や論文を探し読むようになる過程ってみんな通るんだな。
帝国大学で嫌なことを言ってきた男子学生に呆れる場面では、あそこまでひどくなくても学会で似たようなこと言われたな…と苦い記憶を思い出していた。この本の中でも業績で黙らせる(優秀な論文を書くことで好敵手と認める)みたいな感じになっていて、まあそれってよくあることですけど嫌な話ですよね、と思った。
国費留学の時に学問を取るなら結婚を諦めろ、と暗に示された話も、男性の研究者ならそうはならんやろでしかなく、普通に腹立たしいのだが、現在でもなぜか女性研究者は結婚の話題を出されがちで、しかも家庭と研究の両立の話をされがちである。そんなもの男もだろうが。黒田の時代は女性は研究するなら結婚を諦めろという風潮だったが、その9つ下に研究も結婚もという人が出たのは救いだな。黒田は結婚か研究か選んだ結果独身となったのではなく、元々あまり結婚には興味がないという描かれ方をされていたように思う。(研究か結婚か選べと暗に迫られた時に違和感を覚えた描写はあったけれど、結婚をしないことを自分で選んだということでもあるのかな。)
昔の学友と何か少しずつ噛み合わなくなっていくのも、身に覚えのある話だった。まあ人は変わっていくものだしな。自分も。
黒田チカは、ギリギリ時代が間に合った人だったんだなと思った。黒田の努力はもちろん評価されるべきだし、業績も素晴らしいものだ。それでも、その前にいたであろう大勢の、時代が間に合わなかった女性たちのことも考える。そして、周囲の理解のなさや、環境によって、黒田にはギリギリ間に合った時代ではあったが、そうはならなかった同時代の、研究をしたかった/続けたかった女性たちのことも。
「学び続けること」って、本当に大切なことなのだけど、なんせ金にならない(これは自分が研究者であるから余計思うことかも)わけで。それでも学びなき社会に未来はないし、社会を作るのは人間で、学び続けることは社会を豊かにすることと繋がると信じたい。自分が学び続けることも、学生に学びの場を開くことも、諦めたくない。研究も教育もしたい。女性初という枕詞が変に取り沙汰されなくなる未来を見たい。当たり前のように、性別に関係なく、研究を続けていても説明を求められない未来を見たい。
私はどうしたって時代が間に合っている。自分の未来も勝ち取って、死ぬまで研究がしたい。最後の呼吸をする時に論文のピリオドを打ちたい。この濁流の中で次の人たちを渡していくための飛び石になった後で。




るり
@utatanest
歴史そのもの記述はあまりなくて(震災や戦争のことにはもちろん触れられていたけど)、黒田が研究と向き合う/学び続けるということにフォーカスされているという感じでした!他の伝記もいくつか読んでみようかなと思います〜!