
わわわ
@wa___014
2026年3月29日
星のかけら
重松清
読み終わった
重松清の小説では「大人」という役割を全うしようとしながらも人間ゆえの綻びを隠せない者たちの葛藤が描かれる。そんな大人の不完全さに振り回されながらも、子どもたちは驚くほど鋭い観察眼で世界を見つめている。大人は決して完璧ではない。大人が物事を丸く収めようと立ち回る一方で、子どもたちは大人たちがいつの間にか忘れてしまった「本当の悪者を許さない強さ」をその手に握りしめている。しかしそんな彼らも決して無敵ではなく、子どもながらに相手の顔色を伺い、距離を測り、言葉を慎重に選ぶ。自分の意志を貫こうと心を奮わせながらも、自らも大人らしさを身につけていく過程で葛藤する姿は、まさに成長という名の痛みそのものだ。物語を読み進めるうちに読者はふと気づかされる。大人になるということは何かを獲得していくことではなく、あの頃持っていた子どもらしさを少しずつ手放していくことなのかもしれない。
重松清はそんな子どもの繊細な視界を鮮やかに、そして残酷なほど正確に写し出す。息をのむような情景描写の美しさはもちろんのこと、言葉の流れや句読点の間に至るまで語りに呼吸が宿っており、登場人物たちの心の揺れがそのままの温度感で伝わってくるような優しい響きがある。その美しい文章に身を委ねることで、私たちはかつて自分が見ていたはずの、けれど忘れてしまった「透明な世界」をもう一度追体験することができる。
本書の好きな一節↓
真夜中の道路を思い浮かべた。車の流れが途絶えて、しんとした道路に、数えきれないほどのフロントガラスの破片が散らばって、キラキラ光っている。(p.12)
