
K
@fuminam
2026年4月3日
批判的日常美学について
難波優輝
読み終わった
著者の作品を何冊か読んだが、なんとなく考察というか結論に行き着くまでの過程が雑な印象を受ける。ある程度共感するものの、何か一つにフォーカスして考察を深めてもらった方が好みだった。
だけど、最終章の「生誕した私たちの美的義務について」が良かった。
ベネターによる反出生主義を引き合いに出し、「新たな命を誕生させることは道徳的に悪では(本人の同意なく産むという側面を含め)」という論に対し、生きること自体美的経験を積む意味で価値があり、悪ではないと反駁する。
この美的経験が一瞬でもあるのであれば、苦痛な人生も価値がある、とはさすがに楽観的な気もするが、この美的経験を得られるよう子どもを導くことが親の義務というあり様は非常に共感できた。この世界は生きる価値のあるもので、どうたのしむ(美的経験を積む)かを親が教える、というのは親の責任と覚悟、人としての強さを表現する一節だったと思う。
また、誕生に対する本人の同意は、仮定的同意(ここでは産まれた後に産まれて良かったと本人が同意すると仮定し産むこと)が適用できる、という説にも、誕生を判断する親側の責任が伴う。そうできる、そうしてみせるという覚悟が前提となっていて、親となった身としては大変良い章だった。
