
惰眠
@damin__404
2026年4月4日

読み終わった
尾崎放哉の伝記小説。
「咳をしてもひとり」でも知られる尾崎放哉は、種田山頭火と並び称される自由律俳句の第一人者。
東京帝国大学卒のエリートでありながら職と家族を捨て、寺男となり、孤独と貧窮のなか俳句を詠み続けた。その放哉の生涯を俳句とともに追う。
そして、若き日の初恋に刮目し、その実らなかった恋が放哉にもたらしたものとは何か──。
俳句に疎い私でも耳にしたことのある「咳をしてもひとり」の背景で、ひとりの人間の壮絶な人生を垣間見た。
恋焦がれた想いを塞ぎ込み、陰謀渦巻く社会に揉まれ、自身の死場所を求めるような生き方をできるだろうか。私なら社会から離れることはあっても、堂守や寺男にまでなれるだろうか。
今の社会制度だからこそ寺男まではいかない、という面はあるかもしれないが、放哉の気持ちは相当なものであったのだろうと手紙から伝わった。
どうか周囲の理解があって、芳衛との恋を成就することがあったなら、もっと別な道があったのだろうかと心苦しくもあった。
これは書籍の内容とは少し逸れるが、余白のある時代が少し羨ましくもあった。現代は数秒で情報が更新されて連絡も届いてしまう。
こうして手紙でやり取りをするということが、気長に返事を待てるという時代が恋しく思う。