
碧衣
@aoi-honmimi
2026年4月4日
ジーキル博士とハイド氏
ロバート・ルイス・スティーヴンソン,
村上博基
読み終わった
─どこか不快で厭わしい男。
ぶつかった少女の顔を平気で踏みつけ、見た者すべてに不快感を抱かせる男を善良な博士はなぜ法定相続人にしたのだろうか。
「有名すぎてかえって読まれない名作」についに手を出した。人間誰しもに備わる二面性を無理やり引き剥がすことの危うさ、引き剥がした側を制御できず、分離した人格に本来の人格が乗っ取られようとする恐怖がまざまざと描かれている。
「人前ではことさら威厳を見せたい自分」に潜む相容れない「我慢のきかぬ快楽思考」を隠して生きてきたと語るジーキル。
読む前は彼を「自分の内なる欲望に苦悩する善人」という印象を持ってた。しかし本書の彼は世間体を気にする見栄っ張りで案外、俗っぽい男に見えた。そんな人格を分けた二人が同じ恐怖によって破滅したのには皮肉に感じる。
「一個の人間とは、多様な、相矛盾する、独立した生き物の棲む社会の縮図」というジーキルの言葉が真実なのだろう。
余談だけど、ジーキルが人格が分裂する薬を飲んだ時の苦しみを「生みの苦しみも死の苦しみもおよばぬ痛苦」と書いてる文言を見た時、比喩表現だと分かりながらも生んだことも死んだこともないくせに何言ってんだと思わず反応してしまった。