masaya "NATURE FIX  自然..." 2026年4月6日

masaya
@masaya
2026年4月6日
NATURE FIX  自然が最高の脳をつくる
NATURE FIX  自然が最高の脳をつくる
フローレンス・ウィリアムズ,
栗木さつき
おもしろいことに、わたしたちは周囲の状況の情報を収集する能力に、制限を設けている。そうしないと脳が大量の刺澈に圧倒されてしまうからだ。それに、人間の視野は肩じられないほど狭い。聴覚もさほど鋭敏ではない。そのうえ見たり聞いたりしたことのほとんどは処理されないまま放置されている。それなのに人類がこれはじ素楽してきたのは、自動的に優先順位をつける能力がきわめてすぐれているからだ。 「戦略的なプロセスなんですよ。道が混んできたら、脳はラジオを聴くのを文字どおりやめる。ラジオを聴くという行為はいわばシグナルを受信しているだけだから、会話とは違い、シャットアウトできるんですよ。ところが、あなたがご主人と電話で話をしている最中に、ご主人の声を完全に聞かないようにするのはむずかしい」だから携帯電話で話していると、信号や標識や歩行者にすばやく反応できなくなる。ツイッターやメッセージやメールを使っている人なら経験があるだろうが、ソーシャルメディアの情報にはつい注意を惹かれてしまい、シャットアウトするのはむずかしい。 「問題の鍵を握っているのは、注意力なんだよ」助手席に座っているポールが身をよじってこちらを向き、説明を始めた。「注意力がなければ、人は見ることも、聞くことも、味わうこともない。いっぽう脳は、一度に四つの物事に注意を向けることができる。ではどうやって重要なものとそうでないものを見分け、優先順位をつけていると思う?それはね、抑制機能を駆使しているからだ。脳でいちばん発達しているのは、抑制機能をつかさどる回路なんだよ。じつに興味深いだろう?脳は処理しきれないほど大量の情報を入手している。だから脳の仕事の大半は、情報を選別し、不要なものを排除することなんだ。そのおかげで、ぼくたちは意味のあることに集中できるというわけさ」 どんな環境で活動していようと、人間の脳のなかでは三つの主要な神経回路網が機能している。ひとつめは実行ネットワーク。集中して知的作業を行なう前頭前野などが、刺澈への対応と行動の抑制を実行する。ふたつめは空間知覚ネットワーク。これによって人間は自分の位置を把握し、その名のとおり空間を知覚する。三つめはデフォルト・ネットワーク。これは実行ネットワークの活動が低下しているときに活動を始める。この三つのネットワークはいわば陰と陽、水と油であり、それぞれが対立する。つまり、どんなときでもどれかひとつのネットワークだけが活動しているのだ。 信じる力をあなどってはならない。 どうやら「フレッジュ」という考え方が鍵を握っているらしい。イギリスの音響コンサルタンも、ジラリアジントレジャーによれば、朝、鳥のさえずりを耳にすると、人はその音を注意が行き届いて安全な状態と結びつけ、きょうもすべてこの世は事もなしと感じる。人間は進化の過程で、鳥のさえずりをそういった意味で解釈してきた。 人間は視覚の生き物である。 近視の人と近視ではない人のほんとうの違いは、戸外ですごす時間の長さだということだ。日光が網膜にドーパミンの放出をうながし、その結果、眼球が楕円体になりにくくなるからだという。屋内と屋外の光は性質がまったく違う。曇りの日でさえ、屋内より屋外のほうが一〇倍も明るく、広範囲のスペクトル(波長域)の光が存在する。 人生でなしとげたいことのリストを後生大事にして、制覇した山々の記録をつけ、雄大な自然の絶景を写真におさめる。それはもっぱら個人行動の記録だ。 アルコックいわく、幸せになりたいのなら、科学に裏づけられたシンプルな条件を満たせばいい。「結婚をして、仕事を得て、海のそばに住むことだ 一日に四〇分間、ゆったりとしたペースでウォーキングを続ければ、加齢による脳の認知機能の衰えを防げるうえ、実行機能と記憶力が向上し、判断力と行動力のスピードが増すという研究結果だった。 ダーウィンは、人類の最強の本能は共感や思いやりだと言った。こうした本能があるからこそ、人類は生き延びられたのだと考えていた。互いのことを気にかけ、世話をしあうことで、長い子ども時代も、病気になったときも、食料難に見舞われたときも、なんとか生き抜けたのだ。 数千年前から、人類だけが、あるいは人類の一部が、自然の力とより密接につながって、心身を癒やそうとしてきた。彼らが戸外に足を運んだのは、切実になにかを必要としていたからだ。 その後も繰り返し自然のなかですごしたのは、必要としていたものがそこにあったからだ。求めていたのはスピリチュアルなものかもしれないし、人との交流かもしれない。気持ちの深いところでじつに人間らしい複雑なものを求めていて、それはグラフではあらわせないのかもしれない。 「結局のところ」と、地平線を眺めながらストレイヤーは言った。「こうしてわざわざ自然に触れるために出かけてくるのは、そうすればいいことがあると科学者が言っているからじゃない。気分がよくなると実感しているからなんですよ」 四方を壁で囲われた部屋でじっと座り、胸に秘めた思いを打ちあけるのは、苦行のようなものだ」と、シャイフェルドは言う。「大自然のなかに身を置いているうちに、ごく自然に心情を吐露できるのがいちばんいい。自然には人をそういう気持ちにさせる力がある」
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