
パピアニューピピア
@papiopa5656
2026年4月10日

狂四郎2030が途中まで安くなっているというので買った。
あんまりにも夢中だったので、「多少安くなっている電子書籍を丸ごと買うよりも古本屋で全巻揃えた方が安いに決まっている」ということに気がついたのも読み終わった後だった。
でもわたしはこの先永遠にいつだって狂四郎2030を読んでいきたいし、電子書籍で買ったおかげで通勤も退勤の間もずっと読んでいられたのだから全く後悔はしていない。
狂四郎2030と言えばミームとしてあまりにも有名すぎるカレーのくだりしか知らなかったので、ただ何となくセールになっているから買ったにすぎないのだが(好きな作家が推している作品なので読んでみたかったというのはある)、今、この2026年4月にこの作品をセールにする、というのは、出版社からの「戦争反対」「差別反対」「独裁反対」の声なのではないかと思ったし、思えた。
わたしが一番好きなキャラクターは間違いなくバベンスキーだが、わたしが一番共感したキャラクターは志乃だと思う。もちろん、わたしは彼女の持っている強さや賢さの足元にも及ばない人間なのだが、作中繰り返し繰り返し描写される性的暴行とそれに打たれ続ける彼女の姿を見ているとどうしても共鳴せざるを得ない。
人生に何度も痴漢されたことがある。新卒で入った会社はメンターの男にセクハラをされて辞めた。
こんなこと大したことじゃない、と自分に言い聞かせたり、笑い飛ばしたりしてみても、今だに自分が他人の男にとって「女体」どころか「ちんちんをなすりつけていい肉の柱」で「つまんない言葉を吹き込むと自動で愛想笑いしてくれる音が鳴るおもちゃ」であるということをまざまざと見せつけられた瞬間に思考も肉体も凍りついてしまう。
作中何度も暴行される志乃だが、その度彼女は声も出せずに目を見開いて凍りついていた。何度襲われても決して慣れるなんてことはないのである。
この、志乃の様子を、男性が描いたというのはわたしにとってかなり大きな希望であった。わたしはそれがとても嬉しかったのだ。
分かってくれる人がいる、というのは大きな力になる。
この三次元の空間で、たびたび理不尽な目に遭わされながら、独裁者による戦争と、混乱と、差別と、それに自分が暮らす国が傾いていく不安と、自分という人間が、近い将来国から足切りされるであろうという予感に満ちたこの2026年4月という瞬間に、正面きって、20冊もかけてまっすぐに目を見て語りかけ続けてくれた、ということが、とても嬉しかった。
作品を読んだ人ならば、折れそうになるたび励まし合って叱咤し愛し合う狂四郎と志乃の姿を通してとっくに知っているだろうけど。
まんがの描写が素晴らしかったことや、悲しみや苦しみや憎しみとも言えない壮絶な人間の表情変化の凄まじさや、あいまのギャグ描写のくだらなさや、SF設定やミリタリー描写の面白さについて、わたしが詳細に書く必要はもはやないと思う。
少なくともわたしが一番言いたいのはもっと小さくて狭くて浅いことだから。
必死に生きて戦って泣いている人間が垂らす鼻水は美しいよ。