活字畑でつかまえて "中国行きのスロウ・ボート" 2026年4月14日

中国行きのスロウ・ボート
『中国行きのスロウ•ボート』 再読。 二人めの中国人の女の子の話はなんとも言えない余韻が残る。村上春樹はこういうのがほんとに上手い。 「地球儀の上の黄色い中国。これから先、僕がその場所を訪れることはまずないだろう。それは僕のための中国ではない。ニューヨークにもレニングラードにも僕は行くまい。それは僕のための場所ではない。僕の放浪は地下鉄の車内やタクシーの後部座席で行われる。僕の冒険は歯科医の待合室や銀行の窓口で行われる。僕たちは何処にも行けるし、何処にも行けない。」 『貧乏な叔母さんの話』 これはいい短編だな。 「私にわかっているのは、人は頭の上にお盆を載せたまま空を見上げることはできないってことだけ」と彼女は言った。「あなたのことよ」 「もう少し具体的に言ってもらえないかな」 「今のあなたには何ひとつ救えないんじゃないかって気がするのよ。何ひとつね」 『ニューヨーク炭鉱の悲劇』 すごいなこの短編。 最後の最後いきなりの展開に 炭鉱に閉じ籠められた坑夫たちの闇が眼前に迫り そして自分も物語の中に綴じ込められる。 どこまで狙っているのか分からないが。 「きっと彼は風呂が沸くのを待つあいだ、ヘイグのオン•ザ•ロックを何杯も何杯も喉の奥に流しこみながら、シェービング•クリームの罐をずっと眺めていたのだろう。そしてこんな風に考えたかもしれない。俺はもう二度と髭を剃らなくてもいいんだ、と。」 ザ•リアル。 「夜中の三時に動物園に入ったことあるかい?〈中略〉奇妙な体験だったな。口ではうまく言えないけどさ、まるで地面が方々で音もなく裂けて、そこから何かが這い上がってくるような、そんな気がしたね。そして夜の闇の中をね、地の底から這い上がってきたその目に見えない何かが跳梁しているんだ。冷やりとした空気の塊りみたいなものさ。目には見えない。でも動物たちはそれを感じる。そして俺は動物たちの感じるそれを感じる。結局、俺たちの踏んでいるこの大地は地球の芯まで通じていて、そしてその地球の芯にはとてつもない量の時間が吸い込まれているんだよ。」 名文である。 『カンガルー通信』 村上春樹の文章は時にカンガルーのような軽やかさがあり、この作品はその最たるものだ。 『午後の最後の芝生』 村上春樹の全作品の中で 僕がいちばん好きな作品だ。 今回の再読にあたり読み返そうとも思ったが この作品は殿堂入りだから飛ばすことにした。 以上。 『土の中の彼女の小さな犬』 これもいい短編だな。 村上春樹が小説を書く作業は地下室へ降りていくことだと言っているが、それを思い出した。 その作業には並々ならぬ集中力を要し、地下から戻ってくるのにも並々ならね体力がいること。 彼女の手の匂いをかき消したホテルの人工石鹸。 作中で〈僕〉が読んでいた本 ヘンリー•ライダー•ハガードの冒険小説 『シドニーのグリーン•ストリート』 村上春樹の文章の神様であるチャンドラーを意識した軽い私立探偵もの。 羊男が出てくるのがうれしい。 羊男いわく「この世界には、約三千人の羊男が住んでおります」 いやいや、多いな(笑) 羊男と羊博士の電話番号が電話帳に載ってるのクソウケる🤣最高。 しかも「ひつじおとこ (無職)」「ひつじはかせ (無職)」って(笑) 晴れて羊男になった羊博士。 僕だってなれるものなら羊男になりたい。 そうだ僕は潜在的羊男なのだ。 うん?潜在的羊男??
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