
読書猫
@bookcat
2026年4月11日

岸辺のアルバム
山田太一
読み終わった
(本文抜粋)
“「浪人なんてものは、しておくもんだ」
「はあ」
電車の中で「浪人」といわれたくなかったが文句もいえない。
「俺も一年やったよ」
「そうですか」
「よかったと思ってる。学生時代なんて祭りのようなもんだからな。その間に、ぽつんと孤独な一年があるのはいいんだ」”
“二十年にわたる家族の記録である。則子がむしろ自分から思いついて運ぶべきものではないのか。しかし謙作も忘れていたのである。おそらくそれは、現在の家族に対する失望のせいである。アルバムなど大切にしてなんになる。意識下にそういう思いがあったのだ。”
“不思議なほど素直に聞けるのであった。
激しく怒った自分が拘っていたものはなにか、と思う。
家を持てば家に拘らなければならない。
会社につとめれば会社に拘らなければならない。
ある位置につけばその位置に拘らなければならない。
娘の選んだ男が貧弱な三十男だから怒るのも、考えれば下らぬ拘わりからなのかもしれなかった。”