

読書猫
@bookcat
にんげんのことばやくらしをまなぶために本をよんで、すきなところをめもしています。
さいきん、にくきゅうでぺーじをめくるのがうまくなってきました。
2025/3/7-
- 2026年4月15日
水車小屋のウィル 新装版R.L.スティーヴンソン,堀江敏幸,有吉新吾読み終わった(本文抜粋) “「長生きと上等の食事との間には一つだけ違いがある。それは上等の食事の場合は最後に甘いものが出るということだ」” “「立上って私と一緒にお出でなさい」 「あなたは不思議なお医者さんだ」ウィルはしっかりと客を見据えながら言った。 「私は自然の法則なのです。そして人々はわたしを『死』と呼んでいる」 「なぜあなたは最初からそうだと私に言わなかったのですか?」ウィルは叫んだ。 「私の腕にもたれなさい。あなたの力は既に尽きております。気の済むまで私によりかかりなさい。私は年をとっておりますけれども、大変強いんです。私の馬車までほんの三歩です。そこまで行けばあなたのすべての苦悩は終わります。いいやウィルさん」 彼は付け加えた。 「私は長い間あなたがあたかも私の息子であるかのようなになつかしく思って来ました。そして私の長い経歴の中でいろんな人に最後のとどめをもたらして来ましたが、その中で一番私が喜んでやって来たのはあなたのところです。私は人に嫌われます。そして時には人々は私を最初見た時に怒ります。しかし私はあなたのような場合、心温かいよき友達です」 「マージョリーが亡くなってから」 ウィルは答えた。 「私は神に誓ってあなたが私の待ち望んだ唯一の友でありました」” - 2026年4月13日
向田邦子ベスト・エッセイ向田和子,向田邦子読み終わった(本文抜粋) "「東京から転校してきた子が、これをおいしいといったから連れてきた」 というようなことを言って泣き出した。 母親に立ち向う、という感じだった。 帰ろうとする私の衿髪をつかむようにして、母親は私をちゃぶ台の前に坐らせ、丼いっぱいの壺漬を振舞ってくれた。この間、三十八年ぶりで鹿児島へゆき、ささやかな同窓会があった。この人に逢いたいと思ったが、消息が判らないとかで、あのときの礼はまだ言わずじまいである。" (「お弁当」より) "一つだけはっきりしているのは、これは人間とのつきあいにしても同じことだろうが、馴染めば馴染むほど判らないということだ。恐ろしくカンが鋭くて視線ひとつで、こちらの心理の先廻りをするかと思うと、まぎれもなく野獣だな、と思い知らされたりもする。甘えあって暮しながら、油断は出来ない、その兼ねあいが面白い。" (「猫自慢」より) "どんな小さなことでもいい。毎日何かしら発見をし、「へえ、なるほどなあ」と感心をして面白がって働くと、努力も楽しみのほうに組み込むことが出来るよう思うからだ。私のような怠けものには、これしか「て」がない。" (「わたしと職業」より) "生れ変りでもしない限り、精神の整形手術は無理なのではないでしょうか。 私は、それこそ我ながら一番イヤなところですが、自己愛とうぬぼれの強さから、自身の欠点を直すのがいやさに、ここを精神の分母にしてやれと、居直りました。" (「手袋をさがす」より) - 2026年4月11日
岸辺のアルバム山田太一読み終わった(本文抜粋) “「浪人なんてものは、しておくもんだ」 「はあ」 電車の中で「浪人」といわれたくなかったが文句もいえない。 「俺も一年やったよ」 「そうですか」 「よかったと思ってる。学生時代なんて祭りのようなもんだからな。その間に、ぽつんと孤独な一年があるのはいいんだ」” “二十年にわたる家族の記録である。則子がむしろ自分から思いついて運ぶべきものではないのか。しかし謙作も忘れていたのである。おそらくそれは、現在の家族に対する失望のせいである。アルバムなど大切にしてなんになる。意識下にそういう思いがあったのだ。” “不思議なほど素直に聞けるのであった。 激しく怒った自分が拘っていたものはなにか、と思う。 家を持てば家に拘らなければならない。 会社につとめれば会社に拘らなければならない。 ある位置につけばその位置に拘らなければならない。 娘の選んだ男が貧弱な三十男だから怒るのも、考えれば下らぬ拘わりからなのかもしれなかった。” - 2026年4月11日
読み終わった(本文抜粋) “今の時代というとすごく乱雑なくくりになっちゃうんですけど、書いていくことの無力感とか、書かれたものを読む無力感というのがすごくあるんです。それは自分に全部降りかかってくる。自分もその責任の一端を絶対的に負ってるものなんですが、ほんとうにすばらしいことなんていうのは、なかなか書けないわけですね。でも、私のささやかな卑小なものでも、書くことは非常に快楽であるし、読むことは快楽であるということを、ボルヘスという人の作品は教えてくれます。” (川上弘美「ボルヘスと私」より) “夢を書くためには、本当に見た夢をそのまま語ろうとするのではなく、まだ見ていない夢を自分で作り出して、書くことが必要なのではないでしょうか。つまり、いつも起きている時に使うのとは違う風に脳を使うのです。” (多和田葉子「夢という辞典」より) “全体性なんていうのは擬似的でいいんだ、そもそもフィクショナルなんだ、本物である必要はないんだ、ボルヘスはそう語っているように思える。(中略)人間は全体性を希求していいけれど、でもそれが共同体的な熱狂になっては駄目だ、どこかで余裕がなければならないとボルヘスは言っているようです。” (奥泉光「断片性と全体性」より) “プラトンは知ることは想起することだと言ったかと思いますが、ボルヘスを読んでいると、人間存在は思い出せないままに同一の行為を反復しているような気がします。しかし、その行為を行なう瞬間瞬間に、まったく同じことが同じように反復されてきた無限の瞬間が復活する。瞬間とはそのようにしてあらゆる過去と未来の瞬間をはらむという意味で永遠なのだ、と。大切なのは、わたしたちはそれをすでに行なった人であると同時にその人ではないということです。” (小野正嗣「忘却と記憶の混在」より) ”我々にとって、記憶が貴重であり、懐かしいものであるのは、その広大な領域の中で、奇跡のようにそのほんの一握りの砂だけが、我々個々の人間と関わりを持ち、個人的な所有を許されるということです。“ (平野啓一郎「ボルヘスと『現在』」より) “確かに、小説には、物語を楽しむという側面があります。しかし、一番重要なのは、その作品を通過することによって、読者がその作品に入る前に比べて、一つ経験値が増えることです。それが可能なのは、読者が作品の中で、その作品の構造に沿って自然に物を考えることができるようになるからです。簡単に言ってしまえば、小説は認識の芸術です。” (高橋源一郎「ボルヘスとナボコフの間に」より) - 2026年4月10日
マンガの裏技小林翔読み終わった - 2026年4月9日
超個人的時間旅行藤岡みなみ読み終わった(本文抜粋) “トークイベントが終わり、司会者が「このあと、登壇者の皆様との名刺交換のお時間とさせていただきます」と告げた。まずい、と思ったのも束の間、一瞬で研究者Mさんと作家Tさんの前に行列ができた。順当に私だけが手持ち無沙汰になり、大急ぎで「あっそうだやることがあったんだった」という顔で荷物の近くに移動した。リュックの中に手を入れ、ぎりぎり持参していた名刺ケースをゆっくり開け閉めする。存在することの難しい時間が続いた。永遠かと思ったら5分くらいしか経っていなかった。” (藤岡みなみ「地上の太陽」より) - 2026年4月8日
生誕の災厄 〈新装版〉E.M.シオラン,出口裕弘読み終わった(本文) ”失敗はつねに本質的なものであって、私たちに自分の素顔を暴きだしてくれるし、神が見るような視線で、私たちが自分を見ることを可能ならしめるからだ。ところが成功は、人間を含む一切事象の最奥部にあるものから、私たちを遠ざけてしまうのである。“ ”取るに足りない屈辱が爆発的な力を持つことがある。挫折した欲望は人を強壮にする。現世から遠ざかり、現世への執着を断ち切るにつれて、人はいっそうその現世に大きな勢力を占めるようになる。断念は限りない力を恵んでくれる。“ ”月並みという要素をたっぷり含まぬような、真の芸術は存在しない。異様なものを、相も変わらぬ流儀で用いつづける人間は、たちまち飽きられる。異例なもので埋まった単調さほど、我慢のならぬものはないからである。“ ”作家は他のどんな人間にも増して、みずからの弱点を必要とする。弱点を制圧してしまえば、作家は破滅だ。だから作家は、めったに向上などしないよう気をつけねばならない。“ ”何度か繰り返された失敗でも、失敗にはつねに新味がある。ところが成功のほうは、度かさなるとすっかり興趣が褪せ、魅力が消えてしまう。“ ”ひとりの作家にしてやれる一番有益な奉仕は、一定期間、彼に執筆を禁ずることである。短期間の圧制こそが必要なのであって、あらゆる知的活動を中断するという形を取ることになるだろう。まったく中断のない表現の自由は、才能ある書き手をおそるべき危機に追いこんでしまう。“ ”自己を表明すること、働くこと、どんな分野においてもそれは、程度の差はあれ偽装した狂信者の仕業である。なんらかの使命を授けられていると自負しなければ、存在することは困難であり、行動することは不可能だ。“ - 2026年4月7日
ケチる貴方石田夏穂読み終わった(本文抜粋) “熱湯になけなしの理性を取り戻すと、私はお湯張りのスイッチを押した。すかさず体温の高そうなお姉さんが「お湯張りをします!」と唱える。ああ、何という時代だろう。このスイッチを押せばお湯張りには十分も掛からない。もし他の時代に生まれていたら、自分はこの年齢まで生き永らえていないのではとすら思う。” (「ケチる貴方」より) “人間の身体は、何はともあれ、絶対的なものらしい。この身体に生じる実際の痛みは、何にも勝る支配者なのだ。 私は、そのときに悟った。私の人生最大の試練は、たったいま、更新されたのだと。 人生最大の試練。 それは、「失恋から立ち直る」ことではない。 「内腿と膝上の脂肪吸引手術を受けた後に、その脚で家に帰る」ことだ。” (「その周囲、五十八センチ」より) - 2026年4月6日
我が友、スミス石田夏穂読み終わった(本文抜粋) ”これは致し方ない心情なのだが、ガリガリにマシンを譲って貰うより、マッチョに譲って貰ったほうが、格段に申し訳なさは増す。“ ”腕立て伏せの間、私の胸には奇妙な感慨が芽生えた。多幸感とでも言おうか、私は、自分は幸せだと感じたのだ。気の済むまで、誰にも邪魔されず、自分の身体を鍛えられること。それだけの時間と、金と、環境と、平和と、健康な身体が、私の手中にはあること。つまり、私は例えようもなく自由だということ。この瞬間がどこまでも続けば、私は何も言うことはない。“ ”女性は大変ですね。 こんな時に、あの発言を思い出す。あの悲痛そうな、同僚の顔が甦る。あたかも私が全治三年の大怪我を負ったかのような「あちゃあ」という表情。あの同僚は、優しかったのだろう。しかし、私は非情この上ないと感じた。 事は、その特定の発言に限った話ではなかった。今までの人生で行き合った、誰が悪いのではない、こうした追求先不明の違和感は、私の中で燻り続けた。どう処理すればいいかわからず、やがて、これという処理方法はないのだと、本能的に悟った。 そうして私に残ったのは、シンプルであり、そのために具体性に欠け、それでいて切実っぽい、一つの望みだった。曰く、ああ、別の生き物になりたい。“ - 2026年4月5日
なぜ人は締め切りを守れないのか難波優輝読み終わった(本文抜粋) ”<締め切りの時間>と私たちが<生きている時間>がずれるから、締め切りを守れなくなる。“ ”同じ行為を繰り返すことで、私たちは、時間の家を持つことができるのだ。“ ”私たちは徐々に、過去の時間が現在の時間に浸透していることに気づく。過去の苦しみは、「過去の出来事」としてどこかへ消え去ってくれるのではなく、私たちがいままさに生きている現在の制度や文化の中に、そして<時計>の中に「亡霊」のように存在し続ける。過去の出来事は過ぎ去るのではなく、断片的に、幽霊のように現在に戻ってくる。そして同時に、現在の時間を動かしている。時計の中に亡霊が住み着いている。“ - 2026年4月4日
旅する練習乗代雄介読み終わった(本文抜粋) “「書いてみろ」私はホテルのメモ帳とマジックを亜美の前に置いた。「これなら、だいたいみどりさんの手のひらと同じくらいだろ。一つずつ書いてみろ」 「書いたって一緒だよ」 「やってみろって」 「でも」と亜美は黙ってスクロールし直し、思い出そうとしている。 「心をこめて書いたんだろ」私は努めて静かに言った。「書いたことはなくならない」” ”「私もこんな風に生きられたらよかった」という急な声はいくぶん落ち着いていた。「誰かを応援するだけじゃなくて、誰かが応援せずにいられないような、そんなかっこいい生き方ができたら、もう少し自分を好きになれたかも知れない」“ ”亜美は私の肩に手を置いた。親しみからというよりもサッカー選手が試合前にする写真撮影のようで、私は中腰になっていたからなおさらだった。細い肩に手を置き返して前を向いた我々の様子は、パネルに隠れてみどりさんには見えないし、写真にも写っていない。横から誰かが見てくれていたら、その人がどこかで生きていることは私の大きな慰めになったと思うが、人は誰もいなかった。“ - 2026年4月2日
読み終わった(本文抜粋) ”成功とは「錯覚の道」であり、成功した人々はまるで自分の能力に限界がないかのようにふるまうが、これは思い上がり以外の何物でもない。反対に、失敗は「印象深い豊かさを持つ」。“ ”私は生きているが、たまたま自殺していないにすぎない。そしてたまたま生きているにすぎない。人生はそのときが来るまでの余生だ。そしてそれは自殺の観念のおかげだ。“ ”だから何をやってもいい。何をやっても意味はないから。成功しようと失敗しようとどうでもいいではないか。それが私たちになんの関わりがあるだろう。私たちの成功も失敗も、最後には塵のように消えるし、そして私も灰になるのだから。“ ”書くことによって、自分は自殺しないでいられたのだと。「一冊の本は、延期された自殺だ」。彼は憂鬱のときにものを書く。ひとたびものを書き、実現されてしまえば、どんな憂鬱も妄執も和らぐ。“ - 2026年4月1日
これより先には入れません木下龍也,谷川俊太郎,谷川俊太郎、木下龍也読み終わった(本文抜粋) ”刻々に変化する表情は顔の隠れ蓑 寝顔は束の間闇から生まれる朝顔の花“ (「29 谷川俊太郎」より) ”鉢植えの下に鍵などありません、みたいにしおれている向日葵“ (「30 木下達也」より) - 2026年4月1日
神を見た犬 (光文社古典新訳文庫 Aフ 2-1)ディーノ・ブッツァーティ,関口英子読み終わった(本文抜粋) ”望まない者にとって、神の存在ほど重い荷物はなかった。“ (「神を見た犬」より) ”幸せかって? いや、これっぽっちも幸せではなかった。だが、彼の胸の奥底には、つかみどころのない、なにかすばらしいものがあった。思い出と予感が一緒くたになったような感覚……。それが、まるではるか彼方の地平線で光る灯火のように、彼を呼んでいた。あそこに幸せがあるのだ。魂の平穏も、愛の成就も、あそこにある。その呼び声こそが人生であり、そこに到達するためになら、苦しみに耐えるだけの価値があった。だが、はたして到達できるのだろうか。“ (「天国からの脱落」より) ”「……きみをはじめとする何人もの作家が、じっさいには存在しない物語を書くことに人生を費やし、それをごていねいに刊行する出版社があって、買う人間がいる。それで、きみらががっぽり儲かるだけでなく、新聞でも騒がれ、さらに批評家たちが作品について、ああでもないこうでもないと議論をぶち、評論まで出版され、巷の話題をさらう。どれもこれもまったくの作り話だというのに。原子爆弾やスプートニクが世の中を騒がせている現代において、まさしく常軌を逸しているとは思わんか? こんな茶番が、そう長く続くわけがない」“ (「マジシャン」より) - 2026年3月30日
氷菓清水厚,米澤穂信読み終わった(本文抜粋) “「まだわたしは幼稚園児でした。どういうきっかけだったのか。わたしは伯父が『コテンブ』だったことを知りました。いつでも家にあったお菓子『スコンブ』に語呂がよく似ていたからだと思います。わたしは伯父の『コテンブ』に興味を持ちました」” “思い出したい過去がある。それはとりもなおさず思い出す価値のある過去があるということだろう。俺のモットーに照らせば、それは随分と奇異なことに思える。いまそこにある危機を回避するだけの俺に、思い出などなんの意味があるだろうか。” - 2026年3月30日
- 2026年3月29日
読み終わった(本文抜粋) ”人はどうも、それによって自分が傷つくこともあるとわかっていながら、自分と誰かを勝手に比べて手に入れる「優秀さ」、狭き門、選ばれし者といった世界観が好きみたいだ。“ ”「成功」というのはやっぱり隅に置けない。多くの人がめがけているものの、数的序列の上、相対的に成り立つ概念とすると、なかなか手に入れ難い。そして時代とともに移ろうものだという。まるで雲をつかむよう、とはこのことである。“ ”報われる。報われないで結果を捉えるのは、あまりに先が読めない所業、アンコントローラブルすぎる。よって、プロセスそのもの・試行錯誤そのものに、大いなる敬意と労いを自分で自分に持つのだ。“ - 2026年3月29日
まず牛を球とします。柞刈湯葉読み終わった(本文抜粋) “ゆっきーは3個のリンゴを両手で包んで、マッサージをするように優しく表面を撫ではじめた。その手付きをじーっと目で追っていると、手の動きに連動して、リンゴがふにゃふにゃのぐずぐずになっていくように見えてきた。目の前で鉛筆を振るとぐにゃぐにゃに曲がって見える現象みたいに。 すぽん、と気の抜けた音がして、3個のリンゴは「3」と「リンゴ」に分かれた。“ (「数を食べる」より) ”この事実をもって悟った。世界はタマネギを愛しており、タマネギが嫌いなおれは世界に愛されていない。“ (「タマネギが嫌い」より) “人類の幸福を目指すにあたって、前提とすることがふたつある。個人には自己決定権があること、音楽はアルバムで聴くべきということだ。” (「ボーナス・トラック・クロモソーム」より) - 2026年3月26日
- 2026年3月24日
読み終わった(本文抜粋) “今後も日本の経済水準の高さを暗黙の前提とし、ドアさえ開けばいつでも必要とする外国人労働者が入ってくるだろうと考えるのは楽観的にすぎる。“ ”日本語学校で学ぶ留学生たちに話を聞いたときのことだった。彼らも私と同じことを思っているようだった。日本語学校とアルバイト先と寮、彼らはこの三つを毎日ぐるぐると回るような生活を送っていた。彼らにとってはアルバイト先が唯一日本人との新しい出会いの場となっているようだった。“ ”社会学者のロベール・カステルは『社会喪失の時代』の中でこう言っている──「個人は運良く最低限の支えを手にした場合にのみ、ある程度独立した状態でみずからの生活を送ることができる」。“
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