るいべえ "西遊記事変" 2025年3月17日

るいべえ
@ruibee
2025年3月17日
西遊記事変
西遊記事変
馬伯庸,
齊藤正高
西遊記の玄奘一行の旅のプロデュースを任せられた仙人李さんと観音コンビ。道教と仏教で所属も信念も違う二人が、最初は面倒を押し付けあったり腹のうちを読み合ったりしているうちに打ち解けていく。 プロデュースを受ける立場の玄奘もわりとスレていて観音マネージャーの更迭を要求したり、弟子として参加できる出演枠を巡って組織間の押し引きがあったり、妨害役として出演する妖怪とのギャラの交渉があったりと、面倒な裏方仕事を次々に片付けていく様はまさに社畜小説。 制約だらけの中でシナリオごとのとりあえずの落とし所を決めて、あとで見返してこれはまあ上手くいったと悦にいる心境はTRPGのマスタリングに通じるところもある。フィアスコのプレイセットで再現できないだろうか? 最後の苦く人情味のある終わり方もいい。同作者の『両京十五日』もそうだったように、社会の理不尽の中で暴発するしかなかった無名の弱者の側に立つという立場が明確で、エンタメでありながら自然と諷刺性が出てくる。 未訳の作品にもやたらおもしろそうな題材が多く、とにかく芸達者という印象の作家。中国人の友人によると、銀英伝の大ファンで銀英伝の中国語訳の文体をパステーシュした同人小説なんてものまで書いているらしい。いつか読んでみたいものだ。
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