
傾眠
@lowgal04
1900年1月1日
ホットプレートと震度四
井上荒野
かつて読んだ
2024.2 新作らしかったので買ってみたもの。
どの話も基本煮え切らない感情がそこに横たわるというか、イヤな気持ちがすぐ側にいる。最後の『焚いてるんだよ、薪ストーブ』だけはいい話に思えた。
『今年のゼリーモールド』
親の心子知らず。同じように、子の心親知らずという言葉があってもいいだろう。
娘からすればきっと「私が出ていったところでなんにも変わらないし、私が帰省するとやることも負担も増えるだろう」の気持ちもあるんだろう。親って子供が帰ってきて嬉しくても、冗談のつもりで愚痴っぽいことを言うから。それを真に受けたら、じゃあ帰らないでおこうと思う。
でも、まあ、この話を読む限り、私が娘なら「この母親は重いな」と思ってしまうかもしれない。はやく子離れしてくれと思うかもしれない。
自分がやりたいと思った二週間のバイトを優先した結果、実家に帰省できなくなった(確かに少し急すぎるけれど)。それを『事件でも事故でもない、そんな理由』で片付けられてしまっては、こちらも黙っていない。だってやりたかったんだもの。
この母親には、あまりいい印象を抱けない。娘にも同様。少し出てくる父親にも、まあ少し。だが同時に、どこにでもある普遍的な家庭だなとも思う。
『さよなら、アクリルたわし』
なんだか可愛いタイトルだけれど、中身は女性の不器用さと嫌なところ、すこしの男性の無責任感を煮詰めたような話。
セリフの至るところに感じる、こういうリーダー格の女子いるよなあ、という感情。明らかに人を見下した態度、自分が"してあげてる"思考、自分の気に入らないと感じ悪く吐き捨てる。嫌いだ。嫌いとはっきり言ってしまえる度胸は私にはないから、控えめに言うと苦手だ。こういう人が機嫌を損ねると面倒なことになるのは、学生時代の経験で嫌になるほど理解している。
なぜこういう人間は、自分が浮気相手だとしても「自分が勝てる。自分の方が愛し合っている」と感じてしまうのだろう?男にそう囁かれるからだろうか?男に、本当の恋人と比べられて、自分を上げられて調子に乗るのだろうか?自分から男に言うより、邪魔な恋人を動かして男を手に入れようとする。カスみたいな奴だな。
アクリルたわしなんて別に編みたくなかった。でも、落ち着くからという理由で"毎日"編んでしまっていた。毎日だ。毎日、彼女は救いを求めていた。変わり映えない生活の中でも、彼女はどこか疎外感を感じていたのだろう。
そんな精神の支柱とも言える象徴を、さいごに川に投げ込んで捨ててしまう。そしてきっと、おんなじように、旦那と先述の女も捨てられる。捨ててしまえ、そんなもの。