
汐見
@siomi250927
2026年4月21日

サラエボのチェリスト
スティーヴン・ギャロウェイ
読み終わった
戦争は虚しい。本当に。
フィクション小説の形ではあるけど、戦渦の人々の悲しみ、憤り、虚無感が静かに且つ切実に伝わる文章だと感じた。
幼い頃の無邪気な思い出の詰まった街。そこが、通りを渡るだけでいつ撃たれるか、爆撃されるか分からない戦地になるということ。肉体的・精神的な消耗。
生死だけでなく、停戦後のことに思いを馳せる描写がリアルに感じた。戦争を体験した自分はどのように生きていくのか、街の文化や文明をどのように絶やさないでいられるのか。人生を歩んできて突如戦争に巻き込まれた人であれば、少なくとも肉体的な痛みの無い時には確かにこういうことも考えるだろうと思った。
生き延びることへの不安。戦争は、あらゆる面で幸福を遠ざける。
本書では、その大きな暗さの中でも希望を持とうと、人間であり続けようと静かに奮闘する人々が書かれている。
手元に残して読み返す本。
P.201
"ここで起こったことを、ドラガンは絶対に忘れないだろう。戦争が終わって、むかしの暮らしを取り戻すことができて、しかも、彼が生き延びたとしても、なぜこのようなことが起こったかを説明することはできないと思う。説明には論理が必要だが、今のサラエボに論理など存在しない。こんなふうになってしまったことが、彼にはまだ信じられない。生涯、信じることができないであろうことを、ドラガンは願っている。"



