CandidE "サロメ" 2025年3月18日

CandidE
CandidE
@araxia
2025年3月18日
サロメ
サロメ
オスカー・ワイルド,
平野啓一郎
本作『サロメ』に見られるデカダンス——耽美と虚無の魅力、熱に浮かされたような台詞、過剰に美的に死に惹かれていく感覚——これらをワイルドは見事に結晶化した。そのようなヴィクトリア朝の道徳性と対決する彼らの姿勢は、既存価値への挑戦という普遍的な文化的反抗ではあったが、当時の若い世代がこうした美学をペルソナとして強く欲していたことは、どこか希薄な人間性の露呈でもあり、これは1世紀前の啓蒙主義の世代からすれば理解不能であったろう。あるいは、絵画における印象派への初期の批評のように。 このある種の先祖返りの滑稽や異様は、『魔の山』のサナトリウムにおけるコックリさんの流行りにも象徴される、文学的なモチーフであるように個人的には見受けられる。 本書は、用語説明も解説も詳細かつ明快で、文学的・歴史的背景を知らずとも充分に楽しめる親切設計となっているので、教養が深まること請け合い。また、三島由紀夫を強く意識してキャスティングされたであろうから、この機会に、訳者の著作、平野啓一郎『三島由紀夫論』にも手を伸ばしていただきたい。
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