サロメ

14件の記録
- CandidE@araxia2025年3月18日読み終わった本作『サロメ』に見られるデカダンス——耽美と虚無の魅力、熱に浮かされたような台詞、過剰に美的に死に惹かれていく感覚——これらをワイルドは見事に結晶化した。そのようなヴィクトリア朝の道徳性と対決する彼らの姿勢は、既存価値への挑戦という普遍的な文化的反抗ではあったが、当時の若い世代がこうした美学をペルソナとして強く欲していたことは、どこか希薄な人間性の露呈でもあり、これは1世紀前の啓蒙主義の世代からすれば理解不能であったろう。あるいは、絵画における印象派への初期の批評のように。 このある種の先祖返りの滑稽や異様は、『魔の山』のサナトリウムにおけるコックリさんの流行りにも象徴される、文学的なモチーフであるように個人的には見受けられる。 本書は、用語説明も解説も詳細かつ明快で、文学的・歴史的背景を知らずとも充分に楽しめる親切設計となっているので、教養が深まること請け合い。また、三島由紀夫を強く意識してキャスティングされたであろうから、この機会に、訳者の著作、平野啓一郎『三島由紀夫論』にも手を伸ばしていただきたい。
- チャチャの読書@cha-cha2025年3月17日読み終わった訳註、解説が豊富で、わたしの浅い知識で挑む古典への理解を助けてくれた。面白かった。サロメのイメージがいかにビアズリーやモロー等に引き摺られていたかも自覚した。視覚の印象って、視覚のイメージのまま文章を読んでも、想像力で超えられない強さがある。それを無に戻して読むことの大切なこと。映画見た後に原作読む時に似てる。
- wingfeet@wingfeet2025年3月6日読み終わった読了。戯曲本体もさることながら、充実の解説が、この翻訳が作られた背景と本作の魅力を具に解き明かしていて、多層的な理解と知的な興奮を味わえた。