いぬい "鳥類学者だからって、鳥が好き..." 2026年3月29日

いぬい
いぬい
@inuiru
2026年3月29日
鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。
2015年〜2016年に「新潮45」で連載されていたらしい。 ところどころ「モテるモテない」とか「美人教師」とか出てきて、面白おかしく言おうとする感じが鼻につき、微妙に厭な感じがあったんだけど十年前の出版ならまあ仕方ないかというところだ(何が)。 鳥の話は面白い。島の話も面白いので、ふつうに書いてくれても充分面白かったと思う。小笠原諸島にメチャクチャ島があることも初めて知ったし、土地が増えてる島がある(火山島だから溶岩が土地になる!)というのも初めて知った。 しかもこのタイトルがどこで回収されるのか分からなかった。筆者は徹頭徹尾、鳥が好きな感じだった(研究し始めたのは恩師の勧めだったらしいので、そのあたりか)。 メジロの糞のなかにカタツムリがいた話が面白かった。 (私が鳥の糞と思っていた白いやつ、あれは尿らしい。黒っぽいのが糞というか便) メジロとヒヨドリにノミガイという微小な貝を食べさせて実験したところ、15%が生きたまま排出されたらしい。糞から出現した直後に子どもを産んだ個体もいた(そういえばカタツムリってどうやって増えるんだろう)。つまりカタツムリは鳥に食べられることによって遠くへ移動できるという話。植物のように分布を広げる。これはすごいね。 「野生の世界では効率の悪さが死に直結する。捕食者より運動性能が低ければ食べられてしまい、獲物より運動性能が劣れば食いっぱぐれる。動物は敵対関係の中で軍拡競争を行い、運動性能を洗練させてきた。長い進化の歴史の中、突然変異により様々な形質が生まれ、効率の悪い個体は死に、効率の良い個体のみが生き残る。何億年もかけてトライアル&エラーを繰り返し、星の数ほどの実験体の死を積み重ね、機構がブラッシュアップされている。おかげで、わずか25万年の歴史しかない人類では到底及ばぬ知の宝庫ができているのだ。」 にもかかわらず生きもののなかに回転運動は少ないなって話なんだけど、「失敗の科学」を思い出し、「クロノクロス」を思い出したりもした。クロノクロスでは「無数の命がひとつの進化に結びつく、だから捨て石の命というのはない」と言い、それは同時に、その「ひとつの進化」をするのは私たちではない、ということも意味してるんだけど、生物というのは基本的にそういうものなんだろうな。その瞬間をただ生きるために生きてるんだけど、おなじような生の積み重ねが「進化の歴史」をつくってる。 あと、タカやトラ、サメなどの捕食者は武器となる嘴や爪、牙などが発達しているけど身を守る鎧は持たない、攻撃こそ最大の防御、という話が面白かった。防御機構を発達させているのは生態系のピラミッドの下位にいる動物だ、という話。ハリだらけのヤマアラシ、装甲に覆われたアルマジロ(銃弾を跳ね返すらしい)、トゲだらけのイセエビはサメに怯える美味なる食材だ──というくだりで、そういえばウニもトゲだらけだな、栗も(生物ではないが)……と考えていたら、もしかして旨いものってみんなそうなの? と思い始めた。 だからトゲトゲのドラゴンとか、甲羅のあるクッパ(マリオの)なんかもたぶんおいしい、と筆者は書いていて、確かにクッパは旨そうだなと思った。スッポンみたいな。なんかちょっとダンジョン飯みたいな話だ。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved