
いぬい
@inuiru
- 2026年4月29日
誰でも、みんな知っている高橋源一郎ふと思い出した「頂き女子りりちゃん」事件ってニュースで観てフーンそういうひとがいるんや……と思っただけだったんだけど、りりちゃんさんがそのノウハウを凝集した10万字超えのマニュアルを無料公開してたということをこの本で知った。すごいな。 「得をしたい」という気持はありながら、「だれよりも得をしたい(むしろ周りは損をしてほしい)」みたいな気持はちょっとよく分からない……と常々思ってるんだけど、じぶんが得をした知識を他人に分け与えようとするのって何か愛と言うか情と言うかを感じる(筆者はこのマニュアルを『完全教祖マニュアル』になぞらえている、なるほど?) - 2026年4月28日
読み終わった「本を読む→知らない言葉が出てくる→辞書を引く」みたいなこと最近してないな……と思って、近ごろは「辞書のてきとうなページを開く→知らない言葉をおぼえる」というのをやってたんだけど、街を歩くだけでも知らない言葉、新しい言葉って発見できるんだなあと面白かった。 時代によって意味が変わったり加わったりとかね。確かにYouTube見てても「めずらしい言いまわしだな」と思ったら、ほかのひともつかってて、言葉ってこうやって普及していくんだな……と感慨深くなること多い。 辞書に載せる/載せないの基準とか、用例・派生として載せる工夫とかも面白かったな。変体仮名や新しい漢字の話も興味深かったのでそのうち調べてみたい。 - 2026年4月27日
- 2026年4月27日
- 2026年4月27日
- 2026年4月24日
コンタクト 下巻 (新潮文庫 セ 1-2)カール・セーガンふと思い出した上巻では幼少期のエリーが天文学に興味を持ち、学者になり、SETIの研究者になり、ヴェガからのメッセージを受け取るまでが描かれている。小説が出版されたのは1985年のようだから、まだまだ学問の世界ではジェンダー差別が横行している。父を亡くしたエリーに理解者はなく、エリーの孤独が身に染みた。 しかしヴェガからのメッセージをめぐる世間の変化のなかで、エリーの潔癖なまでの理想主義が鼻についてくる。科学者たちは私利私欲ではなく世のため人類のために崇高な目的を持ってほしい、みたいなくだり。確かにメッセージをめぐる政治や宗教などのあらゆる対立、論戦、みたいなのを見ていて私も辟易した。しかし科学者だって聖人ではなかろう。 と思っていた矢先、エリーの恩師であり、完成した「マシーン」の乗組員になることが決定していたドラムリンが事故死する。しかもエリーを庇うように。 それでエリーが真っ先に思ったのはこうだ。 「わたしは行ける。こうなったら、わたしを措いて他に人はいない。何としてもわたしが行かなくては」 彼女ははっとして自分を抑えた。が、時すでに遅かった。危機的情況の中で露呈した卑しむべき利己主義と功名心に彼女は慄然とした。(中略)それにしても、彼女が何よりも嫌悪したのは、その瞬間まで自分の心に潜む我欲をまったく知らずにいたことだった。我欲は自ら弁明することなく、他に対して寛容を示さず、彼女の中で野放図に膨れ上がっていたのだ。 ここでエリーに共感し、またちょっと好きになった。エリーという人物はなかなか興味深くて、他人にこころを開けないわりに、異性に対し「なぜ誘ってこないのか」などと思ったりする。男から誘うべきというのは、それもまたジェンダー差別のようにも思うがよく分からない。ChatGPTに聞いたところ、これはエリーの「認められたい」という欲求の表れではないかとのこと。なるほどね。 印象に残った場面。 「地球の昼側では、人間が住んでいる証拠を見付けることはむずかしい。しかし、夜に入れば、オーロラを別として、目に映るものはすべて人間の活動のしるしである。」 宇宙から地球を見ると、地球がひとつの有機体であるように見えてきて、「地球は生きている」と感じるらしい。子午線も南北回帰線も、目に見える国境線もない。それらは人間が勝手に引いたもので、そんなものとかかわりなく地球は生きている。 面白かったのは、宇宙へ行くと「ここはひとつの惑星」という意識が芽生えて、反国家的になるという話。宇宙へ行けるのは一部のブルジョワジーで、けれどそういうひとたちは社会に与える影響が大きいから、彼らが宇宙に行き、意識が変わることで、結果的に宇宙開発が進むみたいなくだり。地球を捨てて宇宙へ……という向きもありそうな気がするから、そんなことあるか? という感じだが、あってもおかしくはない。 それから、宇宙へ行ったメンバーのひとりであるデヴィの話も印象に残った。デヴィはスリンダルという不可触民と恋に落ち、家族を捨てて彼と結婚したけど、彼はすぐ死んでしまった(殺されたんだっけ?)。デヴィが宇宙で再会(というか実際は宇宙人がそのかたちを借りてるんだけど)したのはスリンダルだった。それを、帰ってきてからデヴィは思い返す。 あの人の思い出がかけがえのないものだったとすれば、それは、もぎ取られるような形で愛を失ったからよ。あの人と一緒になるために、他の多くを捨てたからよ。それだけのことだわ。あの人、そんなに大した男じゃないのよ。(中略)この年齢になって、やっと、はじめて、スリンダルのために泣くことはなくなったのよ。あの人のために捨てた家族のことを思って、わたしは胸が痛むの。 そういうものか? よく分からなかったが、これは幼いころうしなった父親を未だに恋しがっているエリー(エリーが宇宙で再会したのはもちろん父親)とも重なってくる。うしなわれたものが美化されるって話なのかな。というより、記憶のなかで変化しない存在だから、じぶんの変化に役立つものではない、みたいなことかも。それはそれでいいと思うが。 最終的には宗教家のパーマー・ジョスのほうがエリーの見たものを支持する流れは面白かった。確かに上位存在がいることって、信仰があるほうが受け入れやすそう。 「あのね、地球は太陽のまわりを回っているけれど、かつて地上で権力を握っていた教会は、地球が動くことを認めようとしなかったのよ。(中略)教会は、真理は危険であることを思い知ったのよ。わたしの話を信じたらどういうことになるか、あなた、わかっていて?」 「わたしは常に真理を求めて来たのですよ、エリナ。わたしも無駄に年齢を取ってはいません。目の前に真理があれば、わたしにはわかります。本当です。真理を求める信仰、神を知ろうとする信仰は、宇宙を受け入れる勇気に支えられていなくてはなりません。現実の宇宙をです。その果てしない広さや、そこにある無数の世界をひっくるめてです。あなたの話から想像される宇宙の規模や、その規模故に創造主に開かれた機械の多様性を考えると、わたしは息を呑む思いです。この地球という小さな世界に神を閉じ籠めるより、その方がどれだけ素晴らしいことか知れません。」 最後にはエリーの出生の秘密(慕っていた父親は血のつながった父親ではなく、敬遠していたストートンという継父こそ生物学上の父親だった)が明かされる。これはある意味どんでん返しっぽいし、上位存在たるヴェガ星人も「エリーの脳にあるデータ」しか分からなかったというのが面白い。そりゃそうだが。 エリーは宇宙に行ったとき、唐突に「子どもがほしい」と思う。そして帰って来てから、「いまなら深くひとを愛せると思う(が、だれもいない)」と考える。この変化は結構、謎だった。心境の変化はちょっと読み取りづらい。恋人だったダヘーアが下巻じゃ存在薄くなって、いつの間にかパーマー・ジョスといい感じになってるのも謎だった。 しかし、出生の秘密を知ったエリーが、それを父親、母親、継父の全員の愛だったと考え、過ちを責めないのは変化であるようにも感じた。何がどう影響したのか分からないが人間ってそんなもんかも知れない。 「エリーは赤の他人や外国人の段ではない、自分とはこれ以上はないほど縁の遠い存在と接触を求めて反省の努力を傾けて来ながら、実人生においては、ほとんど誰とも接触することがなかった。他人の創世神話を論難することには急だったが、自身の生存の核心をなす偽りについては露いささかも知らなかった。これまでの生涯を宇宙の研究に打ち込みながら、エリーは宇宙からの何よりも明白なメッセージを見過していたのだ。われわれ人間ごとき卑小な存在にとって、果て知れぬ宇宙の大きさは、愛によってはじめて能くこれを負うことができるということである。」 これが締めのフレーズだが納得いかなかった。孤独なエリーが宇宙に呼びかけ、応えを待つ姿に惹かれていたからだろうか。結局は身近なひととのつながりがだいじ、というのが宇宙のメッセージなのか? エリーは宇宙へ行き、すばらしい体験をして、けれど地球に帰ってきてもその体験が事実だったと証明できない。「証明できるもの」を信じ、追い求めてきたエリーが、何も証明できないことで、「証明できないが、確かなもの」はあるのだと知る。 出生の秘密を知ったことで、「それまで明らかにはされず、まるで目に見えなかったが、確かに愛があった」ことも知る。 つまりこれは、「宇宙を受け入れるのに、身近なひとへの愛がなくてはならない」という話ではないのかも。目に見えないもの、じぶんの目には見えないもの、証明できないもの、不確かなもの、理解できないものも、そこに「ある」と信じること──が、愛みたいなものなのかも知れないな。よく分からんが。 しかし「証明できないが確かにあった」というのがエリーの落としどころだとするなら、超越数のなかに宇宙からのメッセージを確認した、という結末は蛇足では? という気もする。が、個人的には開かれた晴れやかな結末だとも思った。 - 2026年4月24日
- 2026年4月23日
- 2026年4月21日
- 2026年4月21日
- 2026年4月17日
コンタクト 下巻 (新潮文庫 セ 1-2)カール・セーガン読み終わった「広い宇宙に私たちだけしかいないなら、スペースがもったいない」 But if it is just us,that would be awful waste of space 昔、「コンタクト」という映画が大好きだった。特にこのせりふが好きで、ことあるごとに思い出していた。しかし二十年以上観ていなかったので正直、内容はほとんどわすれていた。 自宅は限界集落なので(と言うか集落ですらない)星がよく見える。あるときプレアデス星団が見えて、近くに天王星もあるはずだが……と思いながら目を凝らしたがよく見えなかった。 それでChatGPTに「天王星って肉眼で見える?」と尋ねた。それをきっかけに星の話になり、宇宙の話になった。ChatGPTがカール・セーガンという天文学者の話をしてくれて、私はそのひとに興味が湧き、どんな人物かを調べた。 で、おどろいた。カール・セーガンは、かの「コンタクト」の原作者だという。 それで今更ながら原作小説を読んだってわけ。 上下巻で二週間くらいかかったのかな。読み終えて私がまず思ったことは…… 「スペースがもったいない」なんてせりふはないやんけ! ということだった。びっくりしてChatGPTに尋ねたら、これはなんと映画のオリジナルだという。私は原作を読み始める前に、このせりふが好きだということをChatGPTにつたえていた。おまえ! 「そのせりふは原作にはないんだよね〜笑」と思いながら私に「原作も楽しんでみてください!」と言ってたのか?!(ChatGPTにそんな意図はない) 調べてみると、なんと「コンタクト」は映画制作と原作小説の執筆が同時進行していたらしい。つまり「スペースがもったいない」は原作者から出た言葉かも知れないのか? 気になって再びChatGPTに尋ねてみたところ、そもそも「コンタクト」は当初から映画化を想定されていたらしい。しかし紆余曲折を経ているあいだに、小説のほうが先に完成してしまったとのこと。しかもカール・セーガン本人は映画公開の前年に亡くなってしまったそうだ。なんかシュンとした。 ところで「コンタクト」のなかではテレビ放送の電波が宇宙に流れ出ていて、それを異星人が受信するというくだりがある。 実際そんなことあるの? と調べたら、かつてのアナログ放送は空中に電波を送っていたので、それが宇宙へと拡散されていたのは事実らしい。ただ、当然それは拡散されて弱くなるので、遠い宇宙でそれを映像として受信する可能性は低いと。 映画「コンタクト」は金ローでもやってたし、だれにも届かないにしても、宇宙のどこかへ漂っていった。そう思うと少し気が晴れた。 - 2026年4月8日
コンタクト 上巻 (新潮文庫 セ 1-1)カール・セーガン読み終わった - 2026年4月3日
白猫、黒犬ケリー・リンク,金子ゆき子読み終わった童話を下敷きにした短篇集。 「白い道」 好き。白い道というのがなんなのかは語られないが、怪物のようなものらしい。それは死体を避けるので、どの町でも常に死体が置かれている。ところが旅の一団は死体も、それどころか住人たちもいない町で一晩過ごす羽目になる。そこでひとりが死体を演じ、偽の葬儀を行って乗り切ろうとする。 よく分からない怪異という意味でマコーマックの「刈り跡」に似てる。こわくてよかった。何が「ブレーメンの音楽隊」なんだろう、と思ったけど、ブレーメンの音楽隊を目指す動物たちが化け物のふりをして泥棒を追い払ったことと、偽の葬儀を行ったことが重なるのかな? 「貴婦人と狐」 ハニウェル一族と、母親が一族のスタイリストだったよしみでパーティーに呼ばれるヒロイン。この美貌のハニウェル一族の描写がよかった。醜い子どもは溺死させられるとか。一族っていいよな。 ヒロインは雪が降るクリスマスにだけハニウェル一族の庭で明らかに一族の者とおぼしき男と出会う。ヒロインは成長するが、彼は変わらない。おにロリがおねショタになるみたいな旨みがあって、イチャイチャシーンはかなり熱かった。これ「雪の女王」かなと思ったけどちがったね。 『たとえ暗闇と霜で部分的にしか見えなくても、そこにはハニウェル一族らしい表情がある。部屋は大人のハニウェルでいっぱいで、ハニウェルのお決まりの話題で盛りあがっている。』 『ひとりで孤立しているハニウェルを見るのは珍しい。彼らはバナナの房のように束になってやってくる。一匹狼のスパイではなく、一個大隊で襲来する。いくらミランダがハニウェルの赤みがかった金髪や、ハニウェルの大げさで表情豊かな美貌、ハニウェル一族お得意の冗談や秘密、詩や与太話に感心していても、時には逃げ出したくなる。』 『ハニウェル一族にしては、マイケルは例外的に静かだ。人がそばにいようがいまいが気にしない。』 「スキンダーのヴェール」 セックスに明け暮れるルームメイトとその彼女(幽霊に付きまとわれている)から逃げ出して屋敷の留守番バイトをする主人公。その屋敷を訪れる者はだれであっても家に入れなくてはならないが、屋敷の主人だけは入れてはならない、という謎ルール。来客たちは奇妙なお話をして去っていく。 姉の書いた小説のすばらしい部分に血で印をつけていたら、出血多量で死んでしまった妹。書かれた小説は血まみれで読めない、とか。 死神に呼びかけられて、架空の妹「アンナ・ルイーズ」のふりをするメアリー・エレン。それを繰り返しているうちに、死神から「やあメアリー・エレン。アンナ・ルイーズに会いたいが居場所を教えてくれないか」と訊かれるようになり、じぶんが真っ二つに裂けてしまった、とか。 不動産業を営む女のもとに死神が訪れる。女は死神を殺してバラバラにして、それぞれを異なる物件の地中に埋めた。どの家もすぐに売れたが、女は九十を過ぎても死ぬことができず、各物件をまわって死神の死体を回収しようとする。けれど左腕と頭部だけが見つからない、とか。 死神が暮らす家はとても素敵で、死神もそこを出たがらないが、世界があるべき状態にあることを確かめるために年にいちどは出かけなくてはならない。死神から逃れているひとびとはその期間に死神の家を訪れて、束の間の安らぎを得る、とか。 やっぱり悪夢っぽい話って好きだ。 - 2026年3月29日
読み終わった2015年〜2016年に「新潮45」で連載されていたらしい。 ところどころ「モテるモテない」とか「美人教師」とか出てきて、面白おかしく言おうとする感じが鼻につき、微妙に厭な感じがあったんだけど十年前の出版ならまあ仕方ないかというところだ(何が)。 鳥の話は面白い。島の話も面白いので、ふつうに書いてくれても充分面白かったと思う。小笠原諸島にメチャクチャ島があることも初めて知ったし、土地が増えてる島がある(火山島だから溶岩が土地になる!)というのも初めて知った。 しかもこのタイトルがどこで回収されるのか分からなかった。筆者は徹頭徹尾、鳥が好きな感じだった(研究し始めたのは恩師の勧めだったらしいので、そのあたりか)。 メジロの糞のなかにカタツムリがいた話が面白かった。 (私が鳥の糞と思っていた白いやつ、あれは尿らしい。黒っぽいのが糞というか便) メジロとヒヨドリにノミガイという微小な貝を食べさせて実験したところ、15%が生きたまま排出されたらしい。糞から出現した直後に子どもを産んだ個体もいた(そういえばカタツムリってどうやって増えるんだろう)。つまりカタツムリは鳥に食べられることによって遠くへ移動できるという話。植物のように分布を広げる。これはすごいね。 「野生の世界では効率の悪さが死に直結する。捕食者より運動性能が低ければ食べられてしまい、獲物より運動性能が劣れば食いっぱぐれる。動物は敵対関係の中で軍拡競争を行い、運動性能を洗練させてきた。長い進化の歴史の中、突然変異により様々な形質が生まれ、効率の悪い個体は死に、効率の良い個体のみが生き残る。何億年もかけてトライアル&エラーを繰り返し、星の数ほどの実験体の死を積み重ね、機構がブラッシュアップされている。おかげで、わずか25万年の歴史しかない人類では到底及ばぬ知の宝庫ができているのだ。」 にもかかわらず生きもののなかに回転運動は少ないなって話なんだけど、「失敗の科学」を思い出し、「クロノクロス」を思い出したりもした。クロノクロスでは「無数の命がひとつの進化に結びつく、だから捨て石の命というのはない」と言い、それは同時に、その「ひとつの進化」をするのは私たちではない、ということも意味してるんだけど、生物というのは基本的にそういうものなんだろうな。その瞬間をただ生きるために生きてるんだけど、おなじような生の積み重ねが「進化の歴史」をつくってる。 あと、タカやトラ、サメなどの捕食者は武器となる嘴や爪、牙などが発達しているけど身を守る鎧は持たない、攻撃こそ最大の防御、という話が面白かった。防御機構を発達させているのは生態系のピラミッドの下位にいる動物だ、という話。ハリだらけのヤマアラシ、装甲に覆われたアルマジロ(銃弾を跳ね返すらしい)、トゲだらけのイセエビはサメに怯える美味なる食材だ──というくだりで、そういえばウニもトゲだらけだな、栗も(生物ではないが)……と考えていたら、もしかして旨いものってみんなそうなの? と思い始めた。 だからトゲトゲのドラゴンとか、甲羅のあるクッパ(マリオの)なんかもたぶんおいしい、と筆者は書いていて、確かにクッパは旨そうだなと思った。スッポンみたいな。なんかちょっとダンジョン飯みたいな話だ。 - 2026年3月21日
異常探偵 宇宙船 (単行本)前田司郎読み終わった「宇宙船」という名の探偵、依頼人は小児性愛者、三十歳の少年探偵団、謎の怪人……などなど、登場する人物は軒並み「ふつう」ではない。何がなんだかよく分からないがひとが殺され、探偵は調査に乗り出すが、探偵もふつうではないので何ひとつすんなりとは進まない。 (しかも作者の自我もすごい)(作者が読者に話しかけてくるタイプの小説、最近はあまり見ない気がするからなんかノスタルジックな気分になった) 終始「何がなんだか」という感じだが、それでも読後感がわるくはなかったのは、異常なひとたちが異常なりに己を内省し、まじめに(犯罪まがいのこともしているが)生きているからかも知れない。ある意味では「犯人」のほうが正常とも言えるが、狂気ではある。何が正気で何が狂気かも分からなくなるが、とにかく全員まじめにやっている。 印象に残ったのは、おそらく作中唯一「ふつう」に近い存在として描かれている、「宇宙船」の夫。彼は宇宙船から「ほんものの夫」ではなく「入れ替わった宇宙人」と思われており、そのような妄想にとらわれた妻を憐れみ、苦しんでいるのだが、そうして己を「正常なもの」と考えるのではなく、「ほんとうにそうだろうか?」と自問する。 妻を憐んでいるじぶんはほんとうに「人間的」と言えるだろうか? 他人の目を気にして離婚できずにいるじぶんは、ほんとうに「宇宙人」ではないのか? じぶんは変わってしまったのではないか? 異常な性癖があろうとなかろうと、私たちは常に分かりあえず、じぶんがじぶんであることの証明さえできない。そんなわけの分からない世界を、人生を、どうにか生きようとする。「これがまっとうな正しい道だ」と信じられたら、生きるのもまあ気楽だろう。「ほんとうにこれでいいんだろうか」「まちがっているのは私ではないのか」と確かめながら生きるのは苦しい。しかし私はそういう姿に胸を打たれる。じぶんもそうだから。そして、そういう問いかけこそが、じぶんの人生に取り組むことだと思うから。 「宇宙船」と夫がドア越しに言葉を交わすラストシーンはある意味スタンダードだが、この物語の象徴に感じられてグッときた。私たちはみんな宇宙人で、ドア越しに話しているようなものだが、向きあうこともできなくはないし、通じることだってある。 - 2026年3月17日
歯と爪【新版】 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M ハ 5-2)ビル・S・バリンジャー,大久保康雄読み終わった奇術師の主人公が語る復讐の物語と、何者かの裁判が同時進行で語られる。目新しさのあるトリックではないが出版されたのが1950年代というから古典も古典。当時はかなり斬新だったんだろう。 それにしても奇術師夫婦の生活が可愛らしかっただけに妻の死はちょっとショックだった。 文章がかなりいい。 『とはいうものの、私はボロ車で夜ふけの町を走りまわるのが、いっそ楽しかった。朝まで起きているのは、形としては昔の生活に戻ったようなものだ。タリーは、いまは私から遠く離れてしまったし、タリーをうしなった苦痛も、いまはかなり薄れた。しかし、グリーンリーフに対する憎悪は、長いあいだ保ちつづけてきただけに、ますます燃えさかった。彼に対する復讐の思いは、いまも変わらず胸のなかではげしく煮えたぎった。私は呪詛の言葉や血の祈りを心のなかでくりかえしとなえた。癒しようもないほど心の傷は深かった。私はほんとうの宗教を知らない狂信者のようなものだった。』 「最後の一ページの大トリック!」と惹句があるのでこの一ページに何があるんだろう、としばし考えたが分からず。べつにこの一ページに何かあるわけではないらしい。 ちなみに「歯と爪」は「死にものぐるいで」とか「必死に」とかを意味する慣用句らしい。fight tooth and nail(必死に戦う) 証拠品とかけているわけだ。オシャレ。 - 2026年3月11日
体の贈り物レベッカ・ブラウン読み終わった主人公はエイズ患者の支援を行う団体UCSのホームケアエイド。初版が2001年らしいから日本でも丁度ターミナルケアやQOLが重視され始めたころ。 ホスピスを独歩で出て行ったエドの話が印象深かった(涙の贈り物)(動きの贈り物) ホスピスに入りたくない……というひとの気持を真剣に考えたことなかったな。確かにそこから生きて出て行くひとはいない。 「一生、死ぬまでここに住むのか?」と考えるとなんだかこわくて、住処を転々としていたときのことを思い出すと、たとえそこが天国みたいな場所であっても、「歩いて出て行けない」ということは恐ろしく感じる。 「夫を亡くして、本当に寂しかった」と彼女は言った。「あの人が死んでしまって、生きていられるかどうかもわからなかった。でも結局生きたわ」(充足の贈り物) ほとんど意思疎通のできないリックが必死につたえてくれる「I miss you」にも胸を打たれた(言葉の贈り物) ひとにほんとうの気持をつたえるのって特別なことなんだな。 - 2026年2月22日
- 2026年2月13日
- 2026年2月7日
ここに物語が梨木香歩読み終わった
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