
いぬい
@inuiru
2026年3月17日

歯と爪【新版】 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M ハ 5-2)
ビル・S・バリンジャー,
大久保康雄
読み終わった
奇術師の主人公が語る復讐の物語と、何者かの裁判が同時進行で語られる。目新しさのあるトリックではないが出版されたのが1950年代というから古典も古典。当時はかなり斬新だったんだろう。
それにしても奇術師夫婦の生活が可愛らしかっただけに妻の死はちょっとショックだった。
文章がかなりいい。
『とはいうものの、私はボロ車で夜ふけの町を走りまわるのが、いっそ楽しかった。朝まで起きているのは、形としては昔の生活に戻ったようなものだ。タリーは、いまは私から遠く離れてしまったし、タリーをうしなった苦痛も、いまはかなり薄れた。しかし、グリーンリーフに対する憎悪は、長いあいだ保ちつづけてきただけに、ますます燃えさかった。彼に対する復讐の思いは、いまも変わらず胸のなかではげしく煮えたぎった。私は呪詛の言葉や血の祈りを心のなかでくりかえしとなえた。癒しようもないほど心の傷は深かった。私はほんとうの宗教を知らない狂信者のようなものだった。』
「最後の一ページの大トリック!」と惹句があるのでこの一ページに何があるんだろう、としばし考えたが分からず。べつにこの一ページに何かあるわけではないらしい。
ちなみに「歯と爪」は「死にものぐるいで」とか「必死に」とかを意味する慣用句らしい。fight tooth and nail(必死に戦う)
証拠品とかけているわけだ。オシャレ。