いぬい "白猫、黒犬" 2026年4月3日

いぬい
いぬい
@inuiru
2026年4月3日
白猫、黒犬
白猫、黒犬
ケリー・リンク,
金子ゆき子
童話を下敷きにした短篇集。 「白い道」 好き。白い道というのがなんなのかは語られないが、怪物のようなものらしい。それは死体を避けるので、どの町でも常に死体が置かれている。ところが旅の一団は死体も、それどころか住人たちもいない町で一晩過ごす羽目になる。そこでひとりが死体を演じ、偽の葬儀を行って乗り切ろうとする。 よく分からない怪異という意味でマコーマックの「刈り跡」に似てる。こわくてよかった。何が「ブレーメンの音楽隊」なんだろう、と思ったけど、ブレーメンの音楽隊を目指す動物たちが化け物のふりをして泥棒を追い払ったことと、偽の葬儀を行ったことが重なるのかな? 「貴婦人と狐」 ハニウェル一族と、母親が一族のスタイリストだったよしみでパーティーに呼ばれるヒロイン。この美貌のハニウェル一族の描写がよかった。醜い子どもは溺死させられるとか。一族っていいよな。 ヒロインは雪が降るクリスマスにだけハニウェル一族の庭で明らかに一族の者とおぼしき男と出会う。ヒロインは成長するが、彼は変わらない。おにロリがおねショタになるみたいな旨みがあって、イチャイチャシーンはかなり熱かった。これ「雪の女王」かなと思ったけどちがったね。 『たとえ暗闇と霜で部分的にしか見えなくても、そこにはハニウェル一族らしい表情がある。部屋は大人のハニウェルでいっぱいで、ハニウェルのお決まりの話題で盛りあがっている。』 『ひとりで孤立しているハニウェルを見るのは珍しい。彼らはバナナの房のように束になってやってくる。一匹狼のスパイではなく、一個大隊で襲来する。いくらミランダがハニウェルの赤みがかった金髪や、ハニウェルの大げさで表情豊かな美貌、ハニウェル一族お得意の冗談や秘密、詩や与太話に感心していても、時には逃げ出したくなる。』 『ハニウェル一族にしては、マイケルは例外的に静かだ。人がそばにいようがいまいが気にしない。』 「スキンダーのヴェール」 セックスに明け暮れるルームメイトとその彼女(幽霊に付きまとわれている)から逃げ出して屋敷の留守番バイトをする主人公。その屋敷を訪れる者はだれであっても家に入れなくてはならないが、屋敷の主人だけは入れてはならない、という謎ルール。来客たちは奇妙なお話をして去っていく。 姉の書いた小説のすばらしい部分に血で印をつけていたら、出血多量で死んでしまった妹。書かれた小説は血まみれで読めない、とか。 死神に呼びかけられて、架空の妹「アンナ・ルイーズ」のふりをするメアリー・エレン。それを繰り返しているうちに、死神から「やあメアリー・エレン。アンナ・ルイーズに会いたいが居場所を教えてくれないか」と訊かれるようになり、じぶんが真っ二つに裂けてしまった、とか。 不動産業を営む女のもとに死神が訪れる。女は死神を殺してバラバラにして、それぞれを異なる物件の地中に埋めた。どの家もすぐに売れたが、女は九十を過ぎても死ぬことができず、各物件をまわって死神の死体を回収しようとする。けれど左腕と頭部だけが見つからない、とか。 死神が暮らす家はとても素敵で、死神もそこを出たがらないが、世界があるべき状態にあることを確かめるために年にいちどは出かけなくてはならない。死神から逃れているひとびとはその期間に死神の家を訪れて、束の間の安らぎを得る、とか。 やっぱり悪夢っぽい話って好きだ。
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