しんたろう "元彼の遺言状" 2026年4月24日

元彼の遺言状
元彼の遺言状
新川帆立
p263〜264 --弁護士は悪い人から弱い人を守る仕事ではない。  携帯電話を見つめながら、私は自分の頭に浮かんだ言葉に引っかかりを覚えていた。  そうだ。法律の前では、悪い人も良い人も、強い人も弱い人も平等で、どんな悪どいしょうもないクズ野郎であっても、高貴な善人と同じだけの権利を持っている。私はそこが好きだった。  私自身の金勘定にうるさい性格のせいで、そうではない、道徳的に正しい感じの人たちに対して、私はどこか引け目を感じていた。善良な人は私のことを見下しているのではないだろうかと不安であった。しかし、法律は、そんな私も、善良で品行方正な人たちと同じ人間であって、同じだけの権利があるんだと教えてくれた。それが私にとっては救いだったのだ。  だから私も、どのような人間も等しく持っているその権利を実現する仕事がしたいと思ったのだ。 p310 結局その夜、私は警察署内の留置所に入れられた。  暖房もないなか、毛羽立った薄い毛布一枚で寝ることいなったけれども、これまでにないくらい堂々とした大の字になって、ぐっすりと寝た。  お天道様に恥じるようなことは何もしていないと思った。
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