
天果
@melon-rice
2025年3月19日

少年の日の思い出 ヘッセ青春小説集
ヘルマン・ヘッセ
買った
かつて読んだ
ヘッセの「少年の日の思い出」は中学の国語の教科書にも載っている、ある意味で国民的名作だ。
「そうか、そうか、つまりきみはそんなやつなんだな」というエーミールのセリフを覚えているひとは多いだろう。自分も久々にそのくだりを読み返したくなって本書を買った(本書の訳し方はちょっと異なっていたけれど)。
本作はタイトルに反してというか、少年の日からの脱却を読者にもたらすようなところがあると思っていて、それがインパクトの強さとなっているんじゃないか。
つまり、いわゆる「子供向け」の物語は多くが道徳的で、悪いことをしても悔いて謝れば許してもらえるような筋立てになっている。
たしかに幼い子供への情操教育としてそれは間違いではないと思うけれど、小学生を6年もやっていれば、世の中そんな都合よくいかないことくらいはわかるし、道徳的なお話を綺麗事のようにも感じるだろう。
そういう時に、「謝っても許してもらえないことがあるのだ」という現実をドンと突き付けてくるのが本作だ。しかも、それが教科書に載っている。
ご本というのは綺麗事ばかりじゃないんだ、と積極的には本を読んでこなかった子供にも知らしめてくれるような衝撃が、本作の意義の一つであるような気がする。
実際、エーミールが作中の語り手を許していたとしたら、このお話はここまで印象に残っただろうか?



