ナナミ "帰ってきたヒトラー 下" 2026年4月30日

ナナミ
@nanami373
2026年4月30日
帰ってきたヒトラー 下
帰ってきたヒトラー 下
ティムール・ヴェルメシュ,
森内薫
これは…読み進めていいものなのか?とXのタイムラインの偏った意見を眺めている時のようなゾワゾワくる感じ 著者による原注といったりきたりしながら読んでいたので、その都度「正解の態度」を答え合わせして安心しながら読む不思議な読書体験だった 人が好意的に見ている人間に対して発揮する善意の解釈力、怖い いろんな政党から誘いの電話がかかってくるシーンもゾッとした すべてがそういう解釈も一理あるよね、の範囲に収まってしまうなら、人間の営みに真実なんてないのか 物事の軸というものが、好悪の匙加減に影響される解釈なんかで揺らぐ脆弱なものに思える 「記事の内容が理解不能であればあるほど、読者はその記事を高尚だとみなす」という状況が今もあるからにちがいない。そして読者は、内容を理解できずとも文章からポジティブな調子が感じとれれば、それを大切なものだと推論するのだ。 ここはとても身につまされる 意地悪だなあ 書評のインタビューを読むと、この本の目的が簡潔にわかりやすい 不安な気持ちになった地に足のつかない読書体験を、「正解」って言ってもらえたような安心感 嘲笑あるいは笑いを通じて過去に向かいあい、そのうえで「本当に笑っていいのか?」を問い直したい 解説は一段踏み込んでわかりやすかった 「オレ的な文脈」という概念が秀逸 本、面白かったけど、一番この本読んでよかったを感じたのは以下の文章 「オレ的な文脈」というのは私利私欲への誘導ではない。オレには世界がそのようなシステムとして見えるから仕方ないでしょ、という首尾一貫した観点のことで、だからこそ強靭なのだ。 ヒトラーは徹底的に「オレ文脈」でのみ発言する。ゆえに本来的な意味で会話が噛み合わない。しかし、相手にとって都合のいい誤解をさせるだけの余地も微妙に存在する。その結果、一種の精神的な「商談」が成立してしまう……これは、客観性を呑み込むほどに巧緻な主観を戦術的に活用した、特異で強力なコミュニケーション術といえる。
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