橘海月 "草原のサーカス" 2026年5月4日

橘海月
橘海月
@amaretto319
2026年5月4日
草原のサーカス
製薬会社から大学の非常勤講師に出向した姉の依千佳と、アクセサリー作家の妹仁胡瑠。性格も何もかもが違う姉妹が、それぞれの仕事に邁進し脚光を浴びつつも、どこか歯車が狂ってゆき…。著者にしては珍しく、終始現実的な問いを突きつけられる容赦ない物語だった。 自分が好きなアクセサリーさえ作っていれば、ただ幸せだった仁胡瑠が、ミューズのような女性との出会いからあれよあれよと人気作家となり自身がブランド化し、絶頂を迎えた途端に彼女に去られて何も手につかなくなってしまう様がリアルだった。俗に言う天才と呼ばれるアーティスト、彼らの孤独と依存が手に取るようにわかる。 また、計らずしも治験データの捏造に手を染めることとなってしまった依千佳が、裁判や諸々を終えてからじわじわとやり切れなさが込み上げ「言われた通りにしただけなのに!」と内心憤りを感じるのも辛かった。渦中にいるほど自分が見えず、身を守ることすらできずに利用され捨てられる。実在の事件がベースとなっているだけに重苦しい。
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