しんたろう "喪失記" 2026年5月5日

喪失記
喪失記
姫野カオルコ
p226 「そやかてりっちゃんみたいな人は結婚せえへんかっても、いっぱい恋人がいはるやろ」 「……コイビト。コイビト」 ぼんやりと反復した。 「な、いはるやろ」 「ううん。私にはいいひん。男の人には私はいつも友達やわ」 「なに言うてんの。男女間に友情なんかあらへんやろ。おかしなこと言うて…‥」 小夜子は笑った。男女間に友情などないと素直に思えるほどに、彼女は骨の髄から女なのだと私は思った。 「女の人のほうが私に恋してくれはるくらいやわ」 「いやあ、またおかしなことを言う」 小夜子はいっそう笑った。男女間に友情などないと思える神経は、同性間に恋愛、あるいは恋愛に近い感情が生じることもまた発想できないものだと思う。それほど小夜子は女なのだ。 「うらやましいわ」 「いややわあ。何言うてんの」
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